有村架純と町田啓太、本音を晒け出した“大人”たち 『中学聖日記』1章から2章への大きな変化

『中学聖日記』1章から2章への大きな変化

 『中学聖日記』(TBS系)も、残り2話となった。何事も綺麗ごとだらけ、口触りのいい言葉ばかりで取り繕っていた優等生の大人たちは、15歳の恋に触発され、3年の時を経ても結局は恋愛という病に抗えず、無様で情けない自分にあきれながらも前に前にと本能のまま進んでしまう。中学生と女性教師の恋という、センセーショナルな題材と、濃厚で波乱に満ちたストーリー展開の奥底には、「純愛」「美しい」などという言葉では決して形容できない、登場人物たちの生々しい感情そのものがあった。

 このドラマには大きな転換点がある。言うまでもなく、晶(岡田健史)が15歳である5話までが第1章、晶が18歳になった6話以降が第2章であるが、1章から2章に移行することで、大きく変わったことがあった。

 それは、聖(有村架純)の心情を視聴者に説明するための2つの事柄の消失である。

 1つは、聖が独白する場面において唐突に現われる、白い画面にポツンと佇む彼女の姿だ。これは、決して外側には出さない、内心の動揺や戸惑いを示すためだった。稀に晶の独白においても使われている。そしてもう1つは、友近演じる千鶴の存在である。

 以前書いた記事(『中学聖日記』は現代社会を生きる“大人”を揺さぶり続ける 剥がれだした有村架純の仮面)で言及したように、このドラマにおける上布(マキタスポーツ)、原口(吉田羊)、千鶴の3人は、それぞれ愛子(夏川結衣)・晶親子、勝太郎(町田啓太)、聖の“相談役”だった。 2章に移行することで彼らのポジションは少し変化する。上布はより深く彼ら親子の生活に関わり、原口は勝太郎と恋愛関係になった。

 そして、なにより千鶴は、まるでA、A'と、同じ名前の別の役に代わったかのように、意味合い自体が変わっている。

 第1章において彼女は、こちらが疑問に感じるほど常に聖の部屋にいて、彼女の相談に乗っていた。あまりにも聖の部屋の中にしかいない上に、玄関から訪ねてくる素振りもないので、聖の分身かなにかだと思うほど千鶴は、聖の「相談役」としてしかドラマの中で意味を持っていなかった。

 しかし、5話で意外なことが起きる。千鶴が初めて聖の部屋から飛び出したのだ。そして聖を車に乗せ、教師仲間として説教をし、聖の母親(中嶋朋子)の元に向かわせる。それ以降、千鶴は、それまでの役割を終了し、聖の新しい職場の「出来の悪い教え子を優しく見守る」同僚というポジションに移行する。聖の部屋で会話する場面があるものの、ちゃんと玄関から入ってきて夫(バッファロー吾郎A)まで紹介するように、彼女は彼女の人生を視聴者に呈示することで、聖との間に、ある一定の距離を保つのである。

 この千鶴の変容と、白の心象風景の消失から読み取れるのは、独白場面や、聖自身が作り出した分身のような相談役を召喚しなくても、外面内面含めて聖が聖自身でいられるようになったということだ。精神的に孤独だった彼女は、もう1人ではない。4話の終わり、「今のままの聖ちゃんがいい」とそのままの自分を認めてくれた晶が心の奥底にいる。彼女は自分の意志で勝太郎と別れ、再び教師の道を選び、自分の人生の道を切り開いたはずだった。

 だが、またも彼女は同じことを繰り返すことになる。晶と再会したことでまた居場所をなくし、晶を追って船に乗り込む。信念よりも恋愛が勝ってしまう。それでも「あくまで教師として」「心配だから」という枕詞を武器に、全く隠しきれていない恋心に気づかないふりをする。さらには愛子に知られたことを気づいた彼女は、慌てふためいて晶から逃げ、崖から転落するという、どうにもかっこ悪い姿を晒してしまう。そしてようやく、理由も言い訳も通用しなくなり、物置小屋で「黒岩君が好き、好き」と連呼するに至ってしまうのだ。

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