なぜ田中圭にモヤモヤし、松田龍平に惹かれるのか 『けもなれ』正反対の男性が描かれる意図

『けもなれ』田中圭と松田龍平は正反対の男性?

 そんな京谷だが、だからと言って、根っからの悪人ということではまったくない。京谷の母親(田中美佐子)にとっては「優しくて、責任感が強くて、自分ばっかり損をする子」であるし、会社の同僚にとっても良い人に見えているだろうし、私たちの周りにも京谷はごく普通にたくさん存在している。

 一方で恒星は、口を開けば失礼なことや出まかせも言うし、人をはぐらかしてばかりだ。だが、晶に対しても呉羽に対しても、自分に都合の良い女性であれ、自分のために可愛くあれ、自分にとって好ましい服装をしてくれ、というメッセージは発していない。恒星が発しているのは、自分も他人も自由であれ、そうでない人を見ていると、なぜかいらだってしまうというメッセージだけなのだ。

 だからこそ、初対面で晶の張り付いた笑顔を見て「気持ち悪い」と言ったのだろう。これは、悪意のある言葉のようにも思えるが、人が抑圧されている姿が不自然だと思っているということの表れだ。

 このことを考えると、晶が自分への不満を漏らしたことを「可愛くない」という京谷とは正反対の思想の持ち主であることがわかる。つまり京谷は、晶には抑圧された状態でいてほしい、それが自分にとって「可愛い」ということだと、ごくごく自然に悪気もなく考えている人であるのだ。

 一件、人の好さそうな京谷の言動になぜかモヤモヤしてきて、一見、いいかげんで酷い人に見える恒星が徐々に良く見えてくるのは、そんなところに理由があるようだ。

 7話の終わり、晶が京谷に言う「かわいくなくて何が悪いんじゃボケ、うっさいわ」というセリフは、晶の気持ちが整理されただけでなく、京谷にとっても何か新たな一歩が進めるのではないかと思えるさわやかなもので、そんなセリフを吐くガッキーはとても可愛かった……。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■放送情報
『獣になれない私たち』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:新垣結衣、松田龍平、田中圭、黒木華、菊地凛子、田中美佐子、松尾貴史、山内圭哉、犬飼貴丈、伊藤沙莉、近藤公園、一ノ瀬ワタル
脚本:野木亜紀子
演出:水田伸生
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:松本京子、大塚英治
協力プロデューサー:鈴木亜希乃
制作会社:ケイファクトリー
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/kemonare/

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