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松田龍平のセリフに込められた“人生を取り戻す”ヒント 『けもなれ』晶と京谷の別れが意味するもの

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 言いたいことを言わな過ぎる人、余計なことを言い過ぎる人、言いたいことが伝わらない人。言わなければそこに考えがないとされ、思ったままに言った余計な一言は周りを萎縮させ、伝わらない悲しみを知った人はどんどん伝え方がわからなくなっていく。気づけば辛辣な言葉ばかりが耳につき、本音を言うのがはばかられる世の中。『獣になれない私たち』( 日本テレビ系)第7話は、そんな生きにくい社会の負のスパイラルを突きつけられるような回だった。

 晶(新垣結衣)に、恋人の京谷(田中圭)が惹かれたのは、きっとそこに母・千春(田中美佐子)を感じたからだろう。良妻賢母な千春と、優秀な会社員であろうとする晶は、似ているところがある。晶は、そんな精神的母娘とも思える存在だからこそ、絶望したときに連絡を取った。“この人なら言いたいことを言わずとも、感じ取ってくれるだろう”という希望を抱いて。そして、千春もまた同じ感覚を信じて、晶にSOSを送ったのではないか。

 千春は、夫の介護問題で息子たちと意見が対立。これまで家族の考えに歯向かったことのない千春が、自宅で看取りたいと自分の意見を主張するだけで、「冷静じゃない」とまで言われてしまう歯がゆさ。それは、意を決して強そうな服装で会社に改善要求を突きつけたのに、「グレたのか」と一蹴されてしまった晶と重なる。

 京谷は人生の目標を「幸せな家庭? そういうもんでしょ」と話す。だが、その「幸せな家庭」は、結婚をして、子供が生まれたら完成するものではない。専業主婦の千春を「家に守られている」と見るか、「家を守っている」と見るか。京谷と晶で見えているものが大きく異なるのは、そのポジションの難しさを知っているからだ。専業主婦こそ、家庭の特別チーフクリエイター。頼られ、期待され、要望に応え続ける難しさ。相手ありきのプロジェクトに、自分の意見をどこまで主張していいのか、と迷うこともある。それは会社だろうと、家庭だろうと、同じ社会で生きる苦味だ。

 その苦しみをまるごと包み込む1回のハグが、どれだけ自分の心を温めてくれるか。呉羽(菊地凛子)からのハグで知った晶は、千春をそっと抱きしめる。晶にしがみつき、わんわんと子供のように泣く千春は、まるで親子が入れ替わったような光景だった。そして千春の想いを代弁する行動が、晶自身を育て直すことになる。

 言いたいことを言えずにいる人や、言いたいことが伝わらないとあきらめて、生きにくさを噛み締める人もいるということ。好き放題にやっているように見えた松任谷(伊藤沙莉)もまた、うまく伝えられない側の人間だった。一方で、こと恋愛になれば女の本音で立ち向かう心強さもある。仕事はそつなくこなすが、恋愛で本音を言えない晶とは真逆だ。得意分野がそれぞれ違うということ。だからこそ、チームで仕事をする意味がある。

 佐久間(近藤公園)が語った「仕事は信頼」とは、まさに正論。信頼していれば、「抜けの多い人だから」とフォローしながら適度な期待を寄せ、より信頼を深めていける。そして、その信頼は、本音が聞けてこそだったりする。九十九社長(山内圭哉)がうまくいかない営業活動の後、自分に発破をかける本音のシーン姿を見て、この人はパワハラを楽しんでるのではなく、自分自身の機嫌の取り方を他の人にも通用すると信じて疑わないだけなのだとわかる。パワハラ上司になるか、クセの強い愛されキャラになるかも信頼ひとつ。

      

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