吉田羊が今最もホットな女優である理由 『中学聖日記』『母僕』で演技の力量示す
そんなベテラン女優の領域を着々と歩む吉田が出演中のドラマ『中学聖日記』。男子中学生(現在は高校生パートに突入)と主人公の女教師の恋愛が描かれるのと並行して、吉田が演じる“バリキャリ女子”と町田啓太演じる部下との恋模様も展開されている。奔放で掴みどころのない性格、淡々とした口調、ときおり見せる愛らしい一面もあり、主人公とは対照的な、ドラマをかき回す第2のヒロイン像を確立。艷やかな佇まいも印象深い。回を重ねるごとにセンセーショナルな展開が大きな反響を呼んでいるが、彼女もまたその反響を生み出した一つの要因だ。
そして公開中の『母さんがどんなに僕を嫌いでも』で吉田が演じるのは、打って変わって母親役。といっても、子どもたちに笑顔を見せたり、優しい言葉をかけたりするような人物ではなく、彼女が体現するのはその正反対の母親像だ。精神が不安定な激情型であるこの母親は、息子を相手に凄惨な虐待と罵詈雑言を浴びせる。見るに堪えないその姿は、脳裏に焼き付いて離れない。しかしタイトルから察することができるように、本作はそれでも、息子が母に歩み寄ろうとする物語だ。激昂する吉田も見ものだが、やはり、やがては息子の想いに応えるようになっていく、その吉田の変化こそ本作において見逃せないものだろう。
吉田の母親役と言えば、先に公開された『ハナレイ・ベイ』でも見ることができる。しかもこちらも、息子と不仲な母親であり、劇中のセリフには「息子のことが嫌いでした」というものまである。しかし、先述した作品の母親のイメージが“動”だとするならば、本作の母親は“静”といった印象だ。口数は少なく、表情や仕草だけで、息子への薄っすら募る嫌悪感を示している。そんな彼女の奥に隠された愛情が、徐々に表出していく様も見事だ。吉田のトレードマークとも言える溌剌とした姿はたしかにいいし、そのイメージはすでに根強く定着しているが、こういった、より繊細さを要するのであろうキャラクターも、もっと見たいものである。奇しくも公開タイミングが重なった“母モノ映画”の両作によって、これまた吉田の力量を再認識させられることとなった。
また今期はWOWOWにて、主演作『コールドケース2 〜真実の扉〜』(WOWOWプライム)も放送中。彼女がいま最もホットな女優である所以は、これら一連の作品に隠されている。その引き出しは、まだまだ多くありそうだ。
■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。
■放送情報
火曜ドラマ『中学聖日記』
TBS系にて、毎週火曜22:00~23:07放送
出演:有村架純、岡田健史、町田啓太、マキタスポーツ、夏木マリ、友近、吉田羊、夏川結衣、中山咲月
原作:かわかみじゅんこ『中学聖日記』(祥伝社フィールコミックス)
脚本:金子ありさ
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、坪井敏雄
主題歌:Uru「プロローグ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/chugakuseinikki_tbs/
■公開情報
『母さんがどんなに僕を嫌いでも』
11月16日(金)より 新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、イオンシネマほか全国公開
出演:太賀、吉田羊、森崎ウィン、白石隼也、秋月三佳、小山春朋、斉藤陽一郎、おかやまはじめ、木野花
原作:歌川たいじ『母さんがどんなに僕を嫌いでも』(KADOKAWA 刊)
主題歌:ゴスペラーズ「Seven Seas Journey」(キューンミュージック)
監督:御法川修
脚本:大谷洋介
制作プロダクション:キュー・テック
配給・宣伝:REGENTS
(c)2018「母さんがどんなに僕を嫌いでも」製作委員会
公式サイト:hahaboku-movie.jp