『まんぷく』内田有紀の「ありがとう」に込められたもの 朝ドラヒロインは“別れ”からどう立ち直る?

朝ドラヒロインは“別れ”からどう立ち直る?

 そんなこともあってか、福子は萬平との関わり方についても悩みの種を抱えてしまう。咲が亡くなってすぐに自分の交際のことなど考えられないし、萬平との仲に猛反発する母・鈴(松坂慶子)のこともある。自分の思うように意志を固めることができなくなってしまう。そんな福子に、咲の夫・真一(大谷亮平)はある助言をほどこす。「自分の気持ちに正直になるべきだ。(中略)大事な人がいるなら、生きてそこにいるなら、簡単に手放してはいけない。いけないよ」と。

 真一は愛する妻を早くに失っただけに、“本当に大切な存在”と可能な限り一緒にいることの意義を実感している。それだけに真一は、萬平という大切な存在にまだ手を伸ばせる距離にいる福子には、そのことを何としてでも知ってほしいと思っている。人生は一度きりだから。咲の死は福子に大きなショックを残した。ただ、それと同時に、咲という大きな存在に思いをはせつつも、今の自分が向き合わなくてはならない存在を、(真一の言葉を通すことでより克明に)理解したのかもしれない。真一の言う通り、「簡単に手放してはいけない」のだと。第12話の終盤では、福子は再度萬平のもとを訪れたのだった。

 “別れ”を積極的に肯定することはできない。ただ、いざ実際にその“別れ”が訪れてしまったときに、ヒロインは去っていった者たちが残したものから、どう立ち直り、何を感じ、何を学び取るのかを描くこと。たとえ和やかな世界観の朝ドラであっても、死という誰の身の回りでも起こりうる出来事を映す意味は多分にあるのだろう。

(文=國重駿平)

■放送情報
NHK連続テレビ小説『まんぷく』
10月1日(月)〜2019年3月30日(土)【全151回】
作:福田靖
出演:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平/桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、松坂慶子ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋斎
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/mampuku/

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