『ヒモメン』窪田正孝の“憎めなさ”はコジコジに通じる? コメディアンの実力発揮し全方位俳優へ

『ヒモメン』翔ちゃんはコジコジに通じる?

コメディ演技もお手のもの。全方位俳優・窪田正孝のすごみ

 そして最大の魅力は、何と言っても翔ちゃんを演じた窪田正孝の演技力だろう。数カ月前まで『アンナチュラル』(TBS系)で悩める医大生・久部六郎を演じていた俳優と同一人物とはとても思えない振り切れっぷり。見た目はもちろん、声の出し方から姿勢まで役に合わせて自由自在にアジャストする調整能力の高さには目を見張るものがある。

 特に今回秀逸だったのが、いわゆる「顔芸」の多彩さだ。こうしたライトなコメディはカット割りが多く、表情のアップが多用される。そこで窪田正孝は、眼球が飛び出しそうなほど大きく目を見開いたり、ムンクの叫びのように口を開いたり、見ているだけで楽しくなる表情豊かな演技を披露。さらに、高々とジャンプしたり、豪快にスライディングしたり、抜群の身体能力に支えられたキレのあるアクションを織り交ぜることで、視聴者の笑いを誘った。

 発声に関しても工夫が効いている。普段はちょっと眠たげな甘え声で、翔ちゃんのだらしなさを強調。しかし、カッコをつけてエリートを装うとき、ゆり子に対して男らしく愛の言葉をささやくとき、想定外の事態に見舞われ素っ頓狂な声をあげるとき。短い台詞のやりとりの中でも、スムーズに声色を切り換え、コメディアン(喜劇俳優)としての実力も存分に示した。

 『アンナチュラル』ではナイーブな役柄に応じて、微妙な目の動きで心理状態を表したが、今回はいい意味で演技も大味。窪田正孝のアメイジングなところは、繊細さを要求される芝居も、大胆さが必要な芝居も、全方位対応できるところ。直球でも変化球でも勝負できる球種の広さこそが、「カメレオン俳優」と評価される所以だ。

 30代を迎え、年齢的にも今後はますます社会派や歴史物など重厚な作品での活躍が期待される窪田正孝。これだけ弾けた役どころはしばらく見納めになる可能性も高い。大切なゆり子を失うかもしれない……という史上最大のピンチに見舞われた翔ちゃんを窪田正孝がどう演じ切るのか。最後まで気持ち良く笑わせてもらえることを楽しみにしている。

■横川良明
ライター。1983年生まれ。映像・演劇を問わずエンターテイメントを中心に広く取材・執筆。人生で一番影響を受けたドラマは野島伸司の『未成年』。Twitter:@fudge_2002

■放送情報
『ヒモメン』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:15~深夜0:05放送
出演:窪田正孝、川口春奈、勝地涼、佐藤仁美、YOU、金田明夫、岡田結実、片瀬那奈
ゼネラルプロデューサー:横地郁英
プロデューサー:秋山貴人・河野美里
原作:鴻池剛『ヒモメン~ヒモ更生プログラム~』(MFコミックス フラッパーシリーズ/KADOKAWA刊)
脚本:森ハヤシほか
音楽:井筒昭雄
演出:片山修ほか
制作:テレビ朝日 
制作協力:ホリプロ
(c)テレビ朝日
公式サイト:http://www.tv-asahi.co.jp/himomen/

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