いつもの川栄李奈とは少し違う? 『健康で文化的な最低限度の生活』で見せた終始抑えた演技

川栄李奈、『ケンカツ』で抑えた演技

 そんな栗橋を演じる川栄。彼女が元AKB48のアイドルであることは広く知られているが、2015年の卒業から早3年、各方面で華々しく活躍するほかの卒業生を圧倒する勢いで、ドラマに映画にと、女優としての道を走り続けている。

 出演最新作の『センセイ君主』では、ツンデレ高校教師に恋心を燃やす、浜辺美波が扮するヒロイン・佐丸あゆはの1番の友人である中村葵役を好演。暴走気味な浜辺の振り切れたパフォーマンスを、川栄も負けじと小気味良いハイテンションで支えている。スクリーンに向かってついツッコミを入れたくなるような彼女らの愛らしい姿に、上映中の劇場は終始にぎやかであった。さらに今秋には、映画初主演作『恋のしずく』が公開予定。これまでの彼女は、いわゆる“2番手”的なポジションでヒロインを支えるようなはたらきを見せてきただけに、メインのヒロインを務める姿に大きな期待が集まる。

 本作での栗橋役の川栄は、多くの作品で見せる明るいキャラクター性とは違う、終始抑えた演技で、ときに静かに、ときに爆発的に感情を発露させる。この回の栗橋は自身の失態に気づくやいなや、落ち込む姿を見せるのもつかの間、すぐに気持ちを切り替えて、中林がなんとか就労できるようにと次の手を打つ。しかしそれは、いささか独善的過ぎた。とうの中林からも、「人の気持を分かっていない」と言われる始末。ついには担当も外されてしまう。

 またも珍しく、今度は弱音を吐く栗橋。しかし彼女は後任の後藤大門(小園凌央)に、識字障害についてまとめた、お手製の資料を渡す。これが、人付き合いは苦手であるも勤勉な、彼女の“彼女なりの寄り添い方”なのである。

 栗橋はやがて中林との交流も再開。物語のラストでは、彼を前にして、栗橋は屈託のない笑顔を見せる。その笑顔とは、この彼女の成長物語にふさわしい、青春ドラマに見られるようなものであった。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■放送情報
『健康で文化的な最低限度の生活』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:吉岡里帆、井浦新、川栄李奈、山田裕貴、小園凌央、水上京香、安座間美優、谷まりあ、鈴木アメリ、内場勝則、徳永えり、田中圭、遠藤憲一ほか
原作:柏木ハルコ『健康で文化的な最低限度の生活』(小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』連載中)
脚本:矢島弘一、岸本鮎佳
監督:本橋圭太、小野浩司
プロデュース:米田孝(カンテレ)、遠田孝一(MMJ)、木曽貴美子(MMJ)、本郷達也(MMJ)
制作協力:メディアミックス・ジャパン
制作著作:カンテレ
(c)関西テレビ
公式サイト:https://www.ktv.jp/kbss/index.html

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