“オペ室の悪魔”が“天使”に? 二宮和也『ブラックペアン』技術をめぐる争いに終止符
これまでオペを主軸に置きながらも、手術室に完璧な一体感が生まれたことが一度もなかったこのドラマ。というのも、渡海が登場すればサポートに当たる数名以外をそっちのけにして手術が進み、あくまでも「患者を救う」という結果にのみ価値が置かれた手術が展開してきたからだ。目の前の患者が救われると判っていながらも、緊張感が絶えない雰囲気こそが、渡海が“オペ室の悪魔”と呼ばれる所以だろう。
ところが今回、そんな“オペ室の悪魔”がオペ室に入れなかったことで何が起きたか。高階が渡海からの指示を受けながら、それを渡海のようなぶっきらぼうな口調で伝達し、手術室にいる医師と看護師全員が一体となって動く。もちろんその患者が佐伯だからということもあるが、すべての人間が「患者を救う」という結果に至るまでの「団結」という行為に意識が向けられていたわけだ。実際の医療現場においても医療ドラマにおいても理想的な姿がそこに現れたということは、“オペ室の悪魔”はオペ室に入らなければ“天使”に成り代わることもできるのかもしれない。
■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter
■放送情報
日曜劇場『ブラックペアン』
TBS系にて、毎週日曜 21:00~21:54放送
原作:海堂尊『新装版 ブラックペアン1988』(講談社文庫)
脚本:丑尾健太郎
プロデューサー:伊與田英徳、川嶋龍太郎、峠田浩
演出:福澤克雄、田中健太、渡瀬暁彦
出演:二宮和也、竹内涼真、葵わかな、倍賞美津子、加藤綾子、加藤浩次、市川猿之助、小泉孝太郎、内野聖陽
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/blackpean_tbs/