『バーフバリ』大ヒットの背景は? 配給会社ツイン・宣伝プロデューサーに聞く

配給会社ツイン・宣伝プロデューサーが語る

 現在公開中の『バーフバリ 王の凱旋<完全版>』、昨年公開の『新感染 ファイナル・エクスプレス』など、映画ファンを“動かす”作品を送り出している配給会社・ツイン。香港のFortune Star社が権利保有する、ジャッキー・チェンやブルース・リー主演カタログ作品の日本での権利窓口をはじめ、多くのアジア映画をこれまで紹介してきたツインだが、昨年からは、CJ E&M(本社:韓国)と新作及び、カタログライブラリー作品の包括契約を締結し、さらなる作品の多様性を実現させている。

 リアルサウンド映画部では、ツインの宣伝プロデューサーを務める松本作氏にインタビューを行った。『バーフバリ』大ヒットの背景から、ツインが手がける多彩なアジア映画の魅力までじっくりと語ってもらった。

映画の枠を超えた“バーフバリ”

『バーフバリ 王の凱旋<完全版>』(c)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.

ーー昨年の12月29日に公開された『バーフバリ 王の凱旋』が、現在<完全版>として上映されるなど、バーフバリ旋風が巻き起こり続けています。初めこそ知る人ぞ知るといった作品だったと思いますが、ここまでのヒットは予想されていましたか?

松本作(以下、松本):正直、ここまでの大ヒットは想定外でした。公開初週から右肩下がりになっていくのが映画興行の一般的な形なのですが、『バーフバリ 王の凱旋』に関しては公開3週目から右肩上がりとなる異例のヒット曲線でした。前作となる『バーフバリ 伝説誕生』のDVDが大変良く稼働していたので、最低限のヒットは見込んでいたのですが、まさかこんな形になるとは我々も予想していませんでした。本国インドで本編映像の一部がTwitterにアップされると10万以上のRTが起きていたんです。ここから火が付いていっているという実感はありましたが、ライムスターの宇多丸さんがご自身のラジオ番組で紹介してくださったのを皮切りに、著名人の方々が絶賛してくださったのも大きかったですが、『ムトゥ 踊るマハラジャ』を日本で大ヒットさせた仕掛け人・映画評論家の江戸木純さんが『バーフバリ 王の凱旋』の宣伝プロデューサーとして、さまざまな仕掛けを施してくれたお陰かと思います。我々が最初に心がけたのはインド映画を好きな方にきちんと届けようという点でした。2017年4月に『バーフバリ 伝説誕生』は当初1週間限定公開で小規模なものでした。しかし、映画の圧倒的な映像が口コミを呼び、20館以上に広がりました。「インド映画」という冠だけで敬遠してしまう方が一定数いたかと思いますが、この映画は「インド映画」という分類ではなく、「バーフバリ」という捉え方になっていると思います。(笑)。要因としては、絶叫上映をはじめとした“参加型”の企画によって、お客さんがどんどん口コミをしてくれたことに尽きると思います。

ーー10年ほど前の環境なら埋もれてしまう可能性もあったと。

松本:そうですね。カルト的作品として人気を集めていたかもしれませんが、観客全員が一体となる、一緒に作品の中に参加する、そんな唯一無二の作品となれたのはSNS全盛の現代だからこそと言える点はあります。

ーーさらに今度はJOYSOUNDでのカラオケ配信も展開されるなど、まだまだ熱が冷めないですね。

松本:本当にありがたいことです。カラオケ配信のほかにも、コミック化やアニメ化など決まり、映画の枠を超えた“バーフバリ”がどんどん広がっています。『バーフバリ』をきっかけに、ほかのインド映画にも触れていただければうれしいですね。まだ詳細は明かせないのですが、S・S・ラージャマウリ監督の代表作を日本公開できるように準備しています。

ーー『バーフバリ』のように観客からの自然発生的な口コミの力がある一方で、宣伝側からの仕掛けとしてはどんなものがあるのでしょうか?

松本:ツインは韓国映画を中心としたイメージがあるかと思うのですが、『バーフバリ』のようなインド映画もあれば、今年スマッシュヒットを記録した『否定と肯定』のような欧米映画も取り扱っています。まずはそのジャンルを好きな方にきちんと届けること、次にどんな点に日本映画とは違う面白さがあるかを伝えること、このふたつは大事にしています。例えば、6月22日より公開される韓国映画『天命の城』は、1636年に起こった「丙子の役」を題材とした歴史ものです。かつては日本映画のジャンルの中にもこういった史実ものや時代劇が多かったと思いますが、現在は年に数えられる程度です。史実ものが観たい方は、シニア層の方を中心に確実にいるので、そういった方々に届けられるように意識しています。やはり、このようなジャンルの場合、SNSでの拡散というよりも、圧倒的に新聞広告が効果的だったりします。

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