深夜ドラマの主戦場はテレ東からテレ朝に? 『家政夫のミタゾノ』『おっさんずラブ』の異形さ

深夜ドラマの主戦場はテレ東からテレ朝に?

 井ノ原快彦主演の『特捜9』(水曜21時~)、内藤剛志主演の『警視庁・捜査一課長シーズン3』(木曜20時~)、波瑠主演の『未解決の女 警視庁文書捜査官』(木曜21時~)など、“警視庁もの”で固めた4月クールのドラマが、いずれも平均視聴率2ケタの安定した人気を獲得するなど、数字的に見れば完全に“ひとり勝ち”の様相を呈しているテレビ朝日。

 けれども、テレビ朝日が好調なのは、どうやらプライムタイムだけではないようだ。というのも、その深夜ドラマ枠である「ナイトドラマ」が、ここへ来て徐々に存在感を増しているように思えるから。そう、現在『家政夫のミタゾノ』(金曜23時15分~)と『おっさんずラブ』(土曜23時15分~)という、今クールでもひと際異彩を放つ2つのドラマが放送中の枠である。

 テレビ朝日の「金曜ナイトドラマ」と言えば、『トリック』シリーズ、『特命係長 只野仁』シリーズなど、人気ドラマを数多く輩出した、歴史と実績のあるドラマ枠である。近年は、遠藤憲一、菅田将暉、高橋一生らが出演した『民王』(2015年)が高評価を獲得したことも記憶に新しい。その“枠”としてのテイストを端的に言うならば、「プライムタイムでも十分通用する豪華俳優陣とスタッフを起用しつつも、その随所に遊び心が溢れたコメディタッチのドラマ枠」ということになるだろうか。どこかふざけているようで、締めるところはきっちりと締める作品群。先に挙げたドラマは、いずれもそういったテイストのドラマだった。

 さらに近年は、『不機嫌な果実』(2016年)、『奪い愛、冬』(2017年)、『ホリデイラブ』(2018年)など、“深夜の昼ドラ”とも言うべき、男女のドロドロの愛憎劇といったジャンルにも、積極的な姿勢を見せている同枠。けれども、現在放送中の『家政夫のミタゾノ』は、幾重にもわたるパロディと、随所にまぶされた“毒”が痛快な、ある種「金曜ナイトドラマ」の王道とも言える作品に仕上がっているのだった。

 2016年、他局のドラマ『家政婦のミタ』(日本テレビ系)の禁断のパロディか?と思わせつつも、実は『家政婦のミタ』自体が、そもそも市原悦子主演の『家政婦は見た!』(テレビ朝日系)のパロディだったという、やや複雑というか視聴者を必要以上に攪乱する、謎のドラマとしてスタートした『家政夫のミタゾノ』(無論、視聴者が何よりも攪乱されたのは、その主役であるスーパー家政夫“ミタゾノ”を演じる松岡昌宏が、なぜか全編にわたって女装姿であることだった……)。派遣先の家庭の“暗部”を白日のもとに曝け出しながら、善悪の判断は敢えてせず、颯爽と立ち去ってゆくミタゾノの活躍を描いた本作は、蓋を開けてみたら、絶妙にシュールかつ相当な毒と笑いを含んだ展開で、多くの視聴者の支持を獲得したのだった。

 その高評価を受けて「金曜ナイトドラマ」としては久々となる第2シーズンの制作となった今回の『家政夫のミタゾノ』。ミタゾノの新パートナーに、同枠での主演経験も多い剛力彩芽を起用してスタートした今回のシリーズは、初回から驚きの連続だった。とりわけ、ロケットの打ち上げシーンから始まる第1話には、本当に度肝を抜かれた。何のドラマだ、これ。そう、初回でミタゾノが派遣されたのは、ロケットの部品にも使われる耐久性の高いネジを製作する、町工場を経営する家族……って、どこかで聞いたことがある話だぞ。

 というか、この脚本を書いているのは、『下町ロケット』(TBS系)の脚本を手掛けた八津弘幸ではないか。それってアリなのか。さらに、そのエンディングには、写真を見るに、女装したTOKIOのリーダーにしか見えない謎のシンガー“島茂子”の歌唱による楽曲「戯言」が流れる意味不明さ。もはや、ツッコミどころが多過ぎるというか、完全にやりたい放題の世界である。けれども、そこが本作の、何よりも自由で痛快なところであり……その随所に唐突に挟まれる“家事テクニック”ともども、いつの間にか、すっかりクセになってしまいましたよ。

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