「韓国の若い人たちの多くは、光州事件を深くは知らない」 『タクシー運転手』監督インタビュー

『タクシー運転手』監督インタビュー

キム・サボクは完璧な人物ではない


 秀逸なのは、各登場人物の人物像だ。キム・サボクは、言ってみれば三枚目な人物で、その行動はときに情けなく、ときに笑いを誘う。ともすれば重くなりがちなテーマを描きながらも、本作が高いエンターテイメント性を獲得しているのは、ソン・ガンホの軽妙な演技によるところが大きい。そして、その軽妙さこそが、この物語が描く“国境を越えた友情”を、いっそう尊いものとして輝かせる。当初は相対していた2人の人物が、激動の体験を通して固い絆を結ぶのは、チャン・フン監督が描き続けてきたテーマでもある。

「キム・サボクは完璧な人物ではないからこそ、共感を呼べるのだと思います。光州のタクシー運転手であるファン・テスル(ユ・ヘジン)や、学生のク・ジェシク(リュ・ジュンヨル)が、出会ったばかりだというのに、損得を考えずに自分をもてなす姿を見て、彼も心を開き始めるのです。初対面の方にも親しみをもって話しかけ、おもてなしをするのは、韓国人らしい人情で、昔は彼らのように外からお客さんがきたら、当然のように家に呼んでご飯をご馳走したものでした。こうした人情は、距離が近すぎて大変な部分もあるから、最近は韓国でもあまり見られなくなってきましたが、今も多くの韓国人の根底にあるものだと思います」

 映画『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』は、4月21日よりシネマート新宿ほか全国でロードショー。

(取材・文=松田広宣)

■公開情報
『タクシー運転手 〜約束は海を越えて〜』
4月21日(土)より、シネマート新宿ほかにて公開
監督:チャン・フン
出演:ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン、ユ・ヘジン、リュ・ジュンヨル
配給:クロックワークス
2017年/韓国/137分
(c)2017 SHOWBOX AND THE LAMP. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:http://klockworx-asia.com/taxi-driver/

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