『もみ消して冬』から『anone』まで、家族ドラマを考察 求められるのは“ナチュラルエンド”か

今期の家族ドラマを考察

安易なハッピーエンドへの懸念

 家族=ファミリーの物語が増えたことで懸念されるのは、安易なハッピーエンドへの依存。2015年3月にアンハッピーな結末が続いて批判が殺到したあと、連ドラは大半がハッピーエンドになってしまった。特に、家族=ファミリーの物語は、ほぼハッピーエンドと言っていいだろう。

 実際、かつて『Mother』(日本テレビ系)や『Woman』(日本テレビ系)で、問題を美化せずナチュラルな結末で感動を集めた坂元裕二までもが『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)で無難なハッピーエンドを描いていた。

 しかし、一年前の『カルテット』(TBS系)ではハッピーエンドではなく、ソフトランディングするような……言わば“ナチュラルエンド”。今冬の『anone』でも同様に、安易なハッピーエンドに頼らない結末が期待できそうだが、他の作品も続けるだろうか。

 そろそろ制作サイドが、連ドラの「多様な生き方を肯定する」という世界観だけではなく、ハッピー、ナチュラル、アンハッピーなど「多様な結末を肯定する」という姿勢を見せてもいいのではないか。

 同時に、視聴者もいたずらに不満の声をあげず、「多様な結末を肯定する」包容力があってほしいと感じている。ハッピーエンドでないからこそ、余韻や含みを感じたり、さまざまな反響や驚きの声があがったり、ドラマの楽しみ方が広がるからだ。

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月間20数本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

■放送情報
『もみ消して冬~わが家の問題なかったことに~』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演: 山田涼介、波瑠、小澤征悦、小瀧望、恒松祐里、児嶋一哉、千葉雄大、浅野和之、中村梅雀
脚本:金子茂樹
制作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:http://www.ntv.co.jp/momifuyu/index.html

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