『もみ消して冬』から『anone』まで、家族ドラマを考察 求められるのは“ナチュラルエンド”か
一年余り前の『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)ブーム以来、「誰も傷つかない」「多様な生き方を肯定する」という世界観の作品が増えている。これは視聴者ニーズを感じ取った制作サイドの戦略だが、今冬もその傾向は続いていた。
形こそさまざまだが、“家族=ファミリー”を感じさせる脚本・演出が多いのだ。
『もみ消して冬~わが家の問題なかったことに~』(日本テレビ系)と『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)は、物語の舞台そのものが家族。どこをどう切り取っても、家族というキーワードがついてくる。
『FINAL CUT』(フジテレビ系)は亡き母の無念を晴らす復讐劇、『ホリデイラブ』(テレビ朝日系)は夫の不倫で危機を迎える、2月3日スタートの『家族の旅路 家族を殺された男と殺した男』(フジテレビ系)は家族を殺した犯人と対峙するという、家族をきっかけに人生が狂わされる様子が描かれている。
『anone』(日本テレビ系)は不思議な縁で出会った人々、『海月姫』(フジテレビ系)は共同アパートに住むオタク女性たち、『リピート』(日本テレビ系)は同時にタイムスリップする8人の男女が、血縁を超えたファミリーのような運命共同体となっている。
本物であれ疑似であれ、思いの深さは不変
「物語の舞台そのものが家族」の2作は、扱われるエピソードにはシビアなものもあるが、全体のムードは明るい。家族の力で問題を乗り越える展開が予想され、最終的には前述したような「誰も傷つかない」「多様な生き方を肯定する」結末が予想される。
それをさらに推し進めたのが「血縁を超えたファミリー」の3作。リアリティを最小限に抑えてファンタジーとしての家族=ファミリーを描き、血縁という概念を忘れさせてくれる。だから視聴者は「その不思議なコミュニティに迷い込んだ」ような感覚になるのだろう。
一方、「家族に人生を振り回される」3作のベースとなっているのは、家族だからこそ悩み、苦しみ、もがく姿。「誰も傷つかない」「多様な生き方を肯定する」という近年の流れに対するカウンターであり、最後まで対極の世界観で楽しませてくれるはずだ。
アプローチの方法こそ異なるが、出発点となっているのは、人と人の絆。それが本物の家族であれ、疑似家族であれ、思いの深さは変わらない。全作品が終了したとき、「『anone』のハリカ(広瀬すず)と亜乃音(田中裕子)の絆がどの家族よりも深かった」と感じても不思議ではないのだ。