姫乃たまのウワサの濡れ場評017
映画における“いいラブシーン”とは何か? 地下アイドル・姫乃たまが考察
アダルトビデオを年間に100本以上観る生活を送っていたら、ラブシーンに重点を置いて映画を観るというこの連載が始まりました。ラブシーンについて書く以前は、とにかくアダルトビデオのレビューを書き続けていたのです(悲しいことにアダルトビデオをたくさん観たからといって、私に映画を観る素養があるかはわかりません)。
(メイン写真:『お嬢さん』(c)2016 CJ E&M CORPORATION, MOHO FILM, YONG FILM ALL RIGHTS RESERVED)
レビューの仕事をしていると、AV女優さんへのインタビューや、イベントで司会をさせていただく機会も増えるのですが、私の場合、一度でも面識ができるとその後一切その女優さんの作品が観られなくなります。本人に会ったことで改めて興奮を覚える人も多いようですが、次に作品を観るのがもう気恥ずかしくて耐えられないのです。
アダルトビデオの話をわざわざ文章にしてきたことで、だいぶ羞恥心が麻痺している自覚はありますが、そういう妙な恥じらいも無駄に残っています。そしてこの連載を始めたことで、邦画のラブシーンに対しても同じような恥じらいがあることに気が付きました。しかもこちらの場合、出演者と直接面識がなくても恥ずかしいのです。
たとえばこれまでに、『ビジランテ』で披露された篠田麻里子のカーセックスシーンや、『ナラタージュ』で松本潤と有村架純が結ばれるシーンなどについて書いてきました。そのどれに関しても様々な感想を抱きましたが、実のところ一番は「気恥ずかしかった」なのです。(参考1:篠田麻里子、間宮夕貴、岡村いずみ……“濡れ場”に見る、女たちの強さ 姫乃たまの『ビジランテ』評/参考2:地下アイドル・姫乃たまの『ナラタージュ』評:全ては終盤のラブシーンのために)
もしかしたら私はテレビで頻繁に顔を見る人たちに対して、自分が思っている以上に親しみのようなものを覚えているのかもしれません。いままで「上司にしたい芸能人」とか「芸能人好感度ランキング」とか、面識のない人に対してそんな風に思うことが少しだけ腑に落ちなかったのですが、理解できた気がします。
全国どこでも流れているテレビでの彼らと違って、映画館という限られた空間で観る彼らのラブシーンは、公の場では見せていない裏の顔を見てしまった感覚がします。それに、著名なアイドルや女優の場合、事務所による露出のレギュレーションがラブシーンから垣間見えるので、ますます申し訳ないような、有り難いような、恥ずかしい気持ちがするのです。
それなので、面識がない女優のアダルトビデオを観るのと同じように、これまで手放しで堪能できたラブシーンは、ギャスパー・ノエ監督の『LOVE【3D】』と、パク・チャヌク監督の『お嬢さん』でした。どちらも最高です。(参考3:芸術と猥雑の間にある、窒息するほどの“性“ーー姫乃たまが『LOVE【3D】』を観て考えたこと/参考4:“少女性”と“不自由さ”から生まれる官能ーー姫乃たまが『お嬢さん』のフェティシズムを考える)
『LOVE【3D】』は若いカップルの思い出を回想する作品で、当然そこにあるべきセックスが描かれています。恋人同士の性と喧嘩がミルフィーユになって強烈に続くこの映画は、生理的な欲求を省かずに映画にするとどうなるか教えてくれます。なんと言っても、射精中の男性器をてっぺんから3D映像で映し出すカメラワークが最高で、いまでも時々夢にみます。