年末企画:今祥枝の「2017年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 質の高い作品が年初からガンガン上陸

今祥枝の「2017年ベスト海外ドラマTOP10」

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2017年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優たちも紹介。海外ドラマの場合は2017年に日本国内で放送・配信された新作ドラマ(ストリーミング、シーズン2以降含む)から、執筆者が独自の観点で10本をセレクト。第13回の選者は、映画・海外ドラマライターの今祥枝。(編集部)

1.『ビッグ・リトル・ライズ シーズン1』
2.『ツイン・ピークス The Return』
3.『フュード/確執 ベティ vs ジョーン』
4.『LEFTOVERS/ファイナル(シーズン3)』
5.『レギオン シーズン1』
6.『ジ・アメリカンズ シーズン5』
7.『GLOW: ゴージャス・レディ・オブ・レスリング シーズン1』
8.『ゴッドレス -神の消えた町-』
9.『13の理由 シーズン1』
10.『グッド・プレイス シーズン1』

 実験的であれ王道であれ、かつてないほど洗練された質の高い作品が年初からガンガン上陸した2017年。海外ドラマファンならベスト30ぐらいは簡単に出せるほどの豊作で、あとは時間との闘いだったのではないだろうか。個人的には仕事柄、現地での評価が高い作品を追うのは当然ながら、今年はドラマの醍醐味としての”連続性”について改めて考える機会も多かった。ベスト10は、作品の社会的意義や評価云々以上に、自分の”好き”がより勝った10本を選んだ(該当シーズンは全話視聴済みのものから選出)。

 何と言っても今年一番の米TV業界の、というより映画とTVの垣根を軽々と越えて話題をさらったのは『ツイン・ピークス The Return』だろう。25年前に「こんなドラマ観たことない!」と衝撃を受けたが、現在のTVの”何でもアリ”の時代にもぶっ飛び過ぎていて別次元。特に第8話はしばし呆然、言葉を失った。予想以上に真っ当な続編なのに、かつてないほど新しい。デヴィッド・リンチは本当に凄い。

 キーワードは”女性”。世界中で #MeToo 運動が広がりを見せているが、先んじて世に出たドラマの秀作には沈黙を強いられていた女性たちが声を上げる予兆、気運があった。リーズ・ウィザースプーン、ニコール・キッドマンら女優陣主導で、積極的にクリエイティブな面に関わるプロデューサーを兼ねて主演を務めた『ビッグ・リトル・ライズ シーズン1』、往年の銀幕スターの確執からハリウッドのセクシズム、エイジズムを浮き彫りにする『フュード/確執』は、その代表格。特に女性の連帯を鮮やかに描いた前者は、そのメッセージ性も含めて何もかもが完璧だった。後者は、ライアン・マーフィーの女優に対する愛、とりわけジョーン・クロフォードへの強い思い入れがダイレクトに伝わるような感傷的な終盤は目が腫れるほど泣いた。

 もっともパーソナルな作品として選んだのは『13の理由 シーズン1』と『LEFTOVERS/ファイナル』。特に後者は評価や好き嫌いが大きく分かれる作品だろう。デイモン・リンデロフが『LOST』で本当にやりたかったことはこれなのかと思わせる宗教色、メッセージ色、難解さもバリバリのカルト作だが、これほどのめり込んだ作品もないというほど、このテーマに引き込まれた。悲劇から立ち直れず、終わりのない悲しみの淵から抜け出せない登場人物たちの姿は、筆者にとっては共感しかなく癒されもした。ちなみにリンデロフは同じ放送局HBOで『Watchmen』が控えている。こちらも楽しみだ。

 クリエイターにも流行があって、今ならドナルド・グローヴァーやアジズ・アンサリは外せないところだろうが、『FARGO/ファーゴ』以来、ノア・ホーリーに夢中。シーズン3は前2シーズンに比べると若干出来が落ちるので、ホーリー作品としては『レギオン シーズン1』を選んだが、2本入れてもよかったかなと思うほどホーリーの語り口が好み。

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