年末企画:小杉俊介の「2017年 年間ベスト海外ドラマ TOP10」 “完成度が高くて当たり前”の先が見えた

小杉俊介の「2017年ベスト海外ドラマTOP10」

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2017年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優たちも紹介。海外ドラマの場合は2017年に日本国内で公開された新作ドラマ(ストリーミング、シーズン2以降含む)から、執筆者が独自の観点で10本をセレクト。第5回の選者は、弁護士/ライターの小杉俊介。(編集部)

1.『ゴッドレス -神の消えた町-』
2.『マスター・オブ・ゼロ シーズン2』
3.『キーパーズ』
4.『ハノーバー高校落書き事件簿』
5.『THIS IS US 36歳、これから』
6.『GLOW: ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』
7.『イージー シーズン2』
8.『ストレンジャー・シングス 未知の世界 シーズン2』
9.『13の理由』
10.『ユニークライフ』

 極端にネットフリックスに偏ったランキングになったのは、自分がカバーできる範囲の限界と、世界で同時に見られる作品にどうしても肩入れしてしまうという事情からです。

 テレビドラマは今や「完成度が高くて当たり前」。どれを見ても水準以上に面白いんだけど、2017年はむしろ「完成度が高くて当たり前」のその先を模索する意識の強い作品が印象に残った。『ブレイキング・バッド』級の重量作品を連投されても、そうそうキャラクターの物語を味わい消化しきれない。視聴者の時間だって有限だ。長尺の人間ドラマが主流なのは変わらないと思うが、「視聴者の時間の有限性」を意識するドラマの存在感がこれから高まっていくんじゃないか。

 『ゴッドレス』は、宣伝の前面に出ていた「フェミニズム・ウェスタン」の側面よりも、やろうと思えば2時間の映画にまとめられるコテコテの「アメリカの神話としての西部劇」を悠々と7時間にわたって語りきる図太さが新しく、1位に選んだ。

 『マスター・オブ・ゼロ』は、薄めれば何シーズン分にもなった持ちネタ全部を30分×10話の中に注ぎ込んだシーズン1の、そのさらに先を才気だけを頼りに切り開き、しかもそれを重く感じさせないという志の高さが凄まじかった。

 50年前の殺人事件の真相に迫る中でカトリック女子高内でのかつての性的虐待の実態が浮かび上がるドキュメンタリー『キーパーズ』は、当事者の証言と再現映像だけで全7話7時間がドラマ並に面白いという力業。その『ザ・キーパーズ』などの「トゥルークライムもの」のパロディー『ハノーバー高校』は、「アメリカ学園ドラマ」に新しい型を創り上げた。

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