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『HiGH&LOW THE MOVIE 3』評論家座談会【後編】 「映画界におけるブランドになった」

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 ドラマ評論家の成馬零一氏、女性ファンの心理に詳しいライターの西森路代氏、アクション映画に対する造詣の深い加藤よしき氏の三名が、『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』を軸に、同シリーズを語り尽くす座談会の後編。「理想的な終わり方だった」(成馬)、「好き勝手言わせてくれる懐の広さがある」(西森)、「ガバガバ具合が『HiGH&LOW』の醍醐味」(加藤)など、同シリーズへの愛に溢れた発言が目立った前編に続き、後編では次作への期待から2018年のEXILE再始動についてまで、各々の妄想も含めて大いに語り合った。自他ともに認める“HiGH&LOWバカ”たちの飽くなき討論は、まだ終わらないーー。

参考1:『HiGH&LOW THE MOVIE 2』評論家座談会【前編】 「日本発クリエイティブの底力を見た!」
参考2:『HiGH&LOW THE MOVIE 2』評論家座談会【後編】「国境を超えたら、状況が一気に変わる可能性もある」
参考3:『HiGH&LOW THE MOVIE 3』評論家座談会【前編】 「理想的な終わり方だった」

加藤「今度はまた新たな問題に立ち向かっていく」

加藤:そもそもですが、『HiGH&LOW』シリーズって一応、今回で終わりなんですか?

成馬:まあ、終われないですよね(笑)。マイティも決着つけなければいけないし。

西森:コブラが示唆的なセリフを言っていたし、バルジの件もあるし、なんらかの形では続くと思ってます。

加藤:個人的にはここで一旦区切って、『スター・ウォーズ』みたいに何十年も経ってから、突然『エピソード1』が出てくる形でも良いかなと思っています。『1』から『3』までのスパンがすごく短くて、やっぱり急いで作った感じもしたから、もう少しじっくり作ってもらっても良いかなと。

西森:『2』と『3』は2本同時進行だったんですよね。福岡チームと東京チームにわかれて。だから、今後も毎年秋に2本見られることを期待してしまいますが。

加藤:制作的にも内容的にも、今回で一旦リセットして、次からはまた新たな物語が始まるんでしょうね。カジノ問題が解決したから、今度はまた新たな問題に立ち向かっていく感じで。たぶん脚本とかも仕切り直していくのかなと。となると、数年後の話が描かれる可能性もあります。

成馬:分裂して健全になった新生九龍グループに、SWORD地区の代表が幹部として入って、新しい敵と戦うみたいな。

加藤:『3』の最後の方で、九龍のメンバーが帰っていくシーンがあるじゃないですか。あそこでコブラがタイマン張って倒していたら、違う展開になっていただろうけれど、それだと結局、拳で解決することになってしまいます。『HiGH&LOW』には、伝えたいメッセージの中に“拳だけで解決してはいけない”というのがあって、それは脚本における制約にもなっていたと思います。

成馬:物語が進んでいく中で、九龍の位置付けが少し変わった部分はあったでしょうね。『HiGH&LOW』をLDH自体の物語の暗喩として捉えたときにも、やはり状況が変わってきた部分はあるのかなと。というのも、最近は芸能界自体が大きな転換期にあって、それこそ先日、元SMAPの三人が『72時間ホンネテレビ』で共演して大反響となったように、必ずしも体制側が勝利する状況ではなくなってきた。そうすると、九龍グループを大人たち=芸能界の権力の象徴として描いたときに、単純に倒すべき絶対悪としては位置付けられなくなって悲哀が出てきてくる。そうしたパワーバランスの変化も、敏感に感じ取った脚本だったのかもしれません。

西森:そう考えると、バルジが何の象徴なのかが気になります。

加藤:バルジがどういう存在かで、色んなことの意味が変わってきますからね。今のところ、バルジはまったくの謎だから、なんとも言えませんが。ただ、芸能界の状況を鑑みた上でも、一旦ここで区切るのは正解かなと思います。とはいえ、来年には普通に『4』が公開されるかもしれません。もう、僕のちっぽけな常識なんて簡単に越えてくる方々ですから(笑)。

西森「演技でアドレナリンが出た瞬間を撮ろうとしている」

西森:今回は九龍グループが重要な役割を担っていたので、少し前に公開された『アウトレイジ 最終章』とも比較したいところです。『アウトレイジ』は基本的に、あいつに舐められたのが許せないとか、メンツが立たないとか、そういう内輪の話じゃないですか。それに比べると『HiGH&LOW』は圧倒的に“正義VS悪”の話で、だから仲間内には本当の悪人がいないんですよね。

成馬:内輪で揉める物語って、2000年代以降の日本のサブカルチャーの流れに沿ったものですよね。『バトル・ロワイアル』以降のデスゲームものの流れで『仮面ライダー』もライダー同士で戦っていた。その軸で考えると、『HiGH&LOW』はまた違う流れの作品だなと思います。彼らの方が外を向いている。

加藤:『アウトレイジ』は一度でも舐められたら終わりで、ちょっとでも無礼を働かれたら相手を潰さずにはいられない価値観の中で動いているけれど、『HiGH&LOW』は違う。自分より上のパイセンを緩やかに認める文化があるというか、それこそ村山が山王連合会の年下のメンバーから呼び捨てにされても、「村山さんだろ」ってふざけ半分で返すぐらいで済む。目上の人に冗談が通じるんですよね。健全なタテ社会があるというか。

西森:講談社現代新書に中根千枝さんという方が書いた『タテ社会の人間関係』という本があるのですが、それによると日本型のタテ社会の中ではヨコの関係で競争してしまって個々が孤立してしまう構造になっているそうなんですね。それが『アウトレイジ』の世界だとしたら、『HiGH&LOW』は、そこから一歩前に進もうとしているのかもしれないなと。それに、タテ社会が進むと、リーダーの交代が難しくなるということなので、世代交代についていつも語っている『HiGH&LOW』は、まさに日本的タテ社会からの脱却をもくろんでいる感じがしてきます。

加藤:なるほど、そういう面も確かにありそうですね。

西森:これ、1967年に書かれた本ですし、私もけっこう前に読んだので、私の解釈があってるのか難しいんですけど、そういうタテ社会のいいところはそのままに、悪いところは直しながら進んでいる感じがしますね。

加藤:でも、そういう風に考えたときに、悪役である九龍グループ側も全員かっこいいのは、良い意味でズルいなと感じます(笑)。特に九龍の加藤雅也さんが演じた克也龍一郎とか、目の周りに黒いメイクを施していて、あんなヤクザは絶対にいないんですけれど、かっこいいからOKみたいな。年齢的には皆さん、落ち着いているんですけれど、ちゃんとギラギラした感じを絵として見せてくれていて、何の説明もなくとも「この克也龍一郎という男はヤバい」というのが伝わる。だって、襟の立て方とか尋常じゃないですからね。

西森:ギラギラしてるのは、九龍がヨコ同士で競争しているからもある気がしますね。アウトレイジ的ですよね。それと、久保茂昭監督はインタビューで、「ミュージックビデオで大事なのは、アーティストのアドレナリンが出た瞬間をちゃんとカメラで収めること」と仰っていて、それを映画撮影にも応用しているそうです。つまり、俳優が演技でアドレナリンが出た瞬間を撮ろうとしているんですね。それってすごいことだなと。ミュージックビデオ出身の監督としてのプライドを感じました。中茎監督も、「お芝居のキラっとしたところを極力逃さないようにしたい」って言われてましたし。

加藤:たしかに、岸谷五朗さん演じる善信吉龍がコブラに前蹴りを入れるシーンとか、すごくアドレナリン出ているのが見て取れますね。『2』の続きになるシーンで、本当はそれほど尺を取る必要はなかったシーンなのかもしれないけれど、役者陣の演技がすごいから、強く印象に残っています。

西森:岸谷五朗さんは、2002年版の三池崇史監督の『新・仁義の墓場』で主演を務めた頃に、そういうコワモテ路線に進むのかなと思っていたのですが、最近はドラマ『校閲ガール』で穏やかな部長役とかを務めていたから、個人的には以前のようなギラギラも見たいと思っていたんです。でも、今回の『3』で思いっきりコワモテ路線を見せてくれて、本人的にも嬉しそうな感じがしました。それに、加藤雅也さん、岩城滉一さんなども、みんなVシネから出てきた頃のギッラギラの三池崇史監督作品に出てるんですよね。懐かしい思いがしました。

加藤:九龍グループの役者陣は全員、“やりきったろう感”がすごくありますよね。みんなすごく楽しそうに演じていて、伸び伸びと悪役を満喫している。予算もちゃんとあって、振り切った演技ができるとなれば、そりゃあ楽しいですよね。

西森:そういう風に俳優が自分のキャラを活かせる現場って、実はなかなかないのかもしれませんね。ただ最近、若手俳優舞台の取材をしていて思うのは、だんだんと役者ありきの作品作りが浸透してきたのかなと。というのも2.5次元の現場では、以前はいかに原作のキャラを理解して再現できているかが、役者の評価を決めていたところもあったんです。でも、最近では人気のある俳優が育ってきたのでオリジナルも増えてきて、これはほんとに例え話として出てきたんですけど、もし俳優が右手を怪我していたら、それをどう物語に落とし込むかを考えて舞台を作っていくっていう現場もあるそうです。そういう本人のコンディションや状況を、物語のほうに落とし込んで行くって聞いて、『HiGH&LOW』と同じことが起こっているのだなと。

成馬:おそらく、作品には登場していない設定が山ほどあるんでしょうね。倉本聰は一人ひとりのキャラクターに対して履歴書を作るっていうけれど、それと同じようなやり方で精密に作っているのかもしれない。実はそれって実写作品の最大の武器でもあって、俳優自身のキャリアや人生が、そのまま物語のディティールになっていく。長く続けると疲弊もしそうですが、観客を惹きつける要素にはなりますよね。

      

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