『ナラタージュ』小川真司Pインタビュー 「この映画が当たれば、文芸作品の需要が増えるかも」

『ナラタージュ』小川真司Pインタビュー

映画業界の変化


――興行を成立させるために必要なことを、今回はより強く意識したということでしょうか?

小川:『ナラタージュ』の場合はメジャー映画として作るわけですから、どういう風にプレゼンするかは考えましたね。まず、三人のキャストを並べて三角関係の話ですっていう要素が一つ。あとはビジュアルですよね。ポスターのメインビジュアルに使われている写真は象徴的なシーンで。ひと目で、こういう話だという売りを打ち出しました。そういうプレゼンをしていかないとお金も集められないですし、お客さんを呼ぶこともできないので。「濡れ場がある」ということも積極的には出しませんがポイントの一つですね。何より、スターの松本くんが出るっていうこともあって、じゃあ松本くんをどう見せていくかということが念頭にありました。

――小川さんが過去にてがけた作品を見ていると、もっと芸術志向で、興行的なことは、そこまで意識していないのかと思っていました。

小川:そうでもないです。もちろんアスミックにいた時はインデペンデントの中でも大きい作品をやっていて、割とサブカル的なものから出発していたので、そういう作品も多いんですけど、フリーになった今はなんでもやることができます。特に東宝でやる場合は、本当にメジャー作品にしないといけないので。そこは考えないと作れないですよね。

――プロデューサーとしての意識は変わってきているということでしょうか?

小川:15年くらい前だとパッケージで半分ぐらいは資金回収の目処がついたんですけど、今はそれが1割2割になってます。だから劇場で7割以上回収しないと成り立たないマーケットになっているんですね。今『ナラタージュ』みたいな作品が成立させるのは本当に難しいです。メジャー映画として、まだそんなに予算をかけていないこの規模だから成立したというのはありますね。

――今、ティーン向けの恋愛映画が多く作られていますが、そことは違うマーケットを狙っているのでしょうか?

小川:そうですね。本当にティーン向けの恋愛映画しかない状況なので、大人向けの恋愛映画の需要があるだろうなとは、思ってはいたんですね。30代以上。40代50代の女性を含めてという感じです。内容的には40代ぐらいの女性がコアで、上下10歳のところの女性みたいなイメージです。それがどこまで下がっていくか、下がれば大ヒットする可能性もあるかなと。

――手応えは感じますか?

小川:まだわからないですよね。もちろん松本くんと有村さん、坂口くんのキャストに対する反応はあるし、媒体の露出も多いんですけど、どういう評価で迎えられるのかっていうのはまだわからないです。年齢を重ねて人生経験をしている方にはわかりやすい内容だとは思うので、やっぱり年齢の高い方に来て欲しいと思っています。

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