今年話題を呼んだ“甘く切ない”2作ーー映画#ララランドとムーンライト、前田敦子 × 沖田修一監督対談
前田「たまたま男の人同士のお話でしたけど、すごくピュアな恋をしていますよね」
――『ムーンライト』はどうでしたか?
沖田:ビジュアルを見た時にはまさか恋愛映画だと思わなかったので意外性がありました。
前田:うん、『ムーンライト』面白い作品でした。私は主人公の父親代わりのフアンが忘れられないです。悪い場所ですごく悪い仕事をしているのに安心感がある人。
沖田:映画のラストまで家族を超えた存在としてフアンの印象をひきずり続けるよね。
前田:そうなんです。フアンという人がいたからこそ主人公はこうなったのかなとか、いなかったらどうだったろうと考えてしまう。そうすると、社会的には悪とされることも「しょうがない」と思えてくる。「しょうがない」に尽きます。
沖田:なるほど、「しょうがない」か。そういう風にも見られてしまうね。フアンの男性像がどこまで主人公の内面に尾を引いていったのか僕たちは想像するしかないじゃない。だから前田さんの感想も理解できます。個人的には、何事も分かりやすく描きたがる映画が多い中で『ムーンライト』は全てを明かさない作りがとてもいいなと。
前田:なるほど、そうなんですね。
沖田:あとはこのお母さん! ナオミ・ハリス演じるお母さんも印象的だね。
前田:わかります。私もすごく好き。最初はすごく嫌なお母さんなんですけどね。
沖田:ねえ。
前田:こうしてみるとこの映画は本当にみんな心が優しい。罪を憎んで人を憎まずじゃないけれど、やっぱり「全てがしょうがない」と思えてしまう。
沖田:そうなんだよね。許すしかなくなっちゃうんだよ。
――LGBT映画が盛り上がっていますが、本作では主人公の恋愛をどうみましたか。
前田:たまたま男の人同士のお話でしたけど、すごくピュアな恋をしていますよね。恋愛映画というと女子同士でもいいし男子同士でもいいし色々な人がいて当たり前だと思っているので、そこは特別に考えてはいませんでしたね。
沖田:『さらば、わが愛/覇王別姫』なんかも印象深い映画でしたが、今になって取り立ててショッキングということもないですからね。
前田:私は恋愛映画という見方以上に、こういう環境に生まれた男の子のヒューマンの話だなと思って観ていました。
沖田:人と人の話だよね。僕は年の離れた男同士の関係が好きなので、父親代わりのような関係性はグッときましたね。