『ゆとりですがなにか』『ぼくらの勇気 未満都市』……SPドラマの肝は“人物描写”にアリ

SPドラマの肝は“人間”を描く点にあり?

 ちなみに、こうした形の“スペシャルドラマ”で、最も成功した事例を挙げるなら、やはり『北の国から』(フジテレビ系)になるだろう。1981年から1982年にかけて全24回が放送されたあと、1983年から2002年に至るまで、実に合計8本ものスペシャルドラマが作られた『北の国から』。その脚本家である倉本聰は、現在放送中のドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)のなかで、自身をモデルとしているであろう主役の石坂浩二に、奇しくも先日、こんな台詞を言わせていた。「(テレビ)局がそう仕向けているのかもしれないけど、今の脚本屋は、人を描くことより、筋が大事だって勘違いしてるんだ。視聴者は、本当は、筋を追うよりも、人間を描くことを求めているのにな」。

 筋を追うよりも、人間を描くことが大事。なるほど、上記のスペシャルドラマの魅力は、案外その“あらすじ”にあるのではなく、“人間”そのものが描かれている点にあるのかもしれない。だからこそ、多くの人に求められ、そして愛されるのだ。ということで、まずは7月2日の『ゆとりですがなにか 純米吟醸編』である。当代きっての人気脚本家のひとりであり、2019年には、NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』の脚本を担当することも決定している宮藤官九郎は、今回のスペシャルドラマのなかで、“ゆとり第一世代”の3人を、どんなふうに描き出してゆくのだろうか。クドカン自身も「思いの強い」ドラマだと公言している本作だけに、その内容に激しく期待したい。

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。

■放送情報
『ゆとりですがなにか 純米吟醸純情編』
日本テレビ系にて、7月2日(日)&9日(日)22:30~23:25放送
出演:岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥、安藤サクラ、太賀、島崎遥香、高橋洋、吉岡里帆、清野菜名、手塚とおる、青木さやか、蒼井優、でんでん、中田喜子、吉田鋼太郎
脚本:宮藤官九郎
演出:水田伸生
プロデューサー:枝見洋子、仲野尚之(AX-ON)
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:http://www.ntv.co.jp/yutori/special2017/index.html

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