土屋太鳳、亀梨和也との“禁断のキスシーン”をどう切り抜けた? 『PとJK』コメディエンヌぶり

土屋太鳳は、アクティブな役でこそ引き立つ

 つい先日公開された『ひるなかの流星』では、同級生と担任教師との三角関係に揺れるヒロインが描かれたが、同じ週から警察官と女子高生の恋愛模様を描いた『PとJK』も公開された。どちらも少女漫画の映画化が流行り始めた最近になって原作の連載が開始された新しい作品なだけに、90年代頃の作品と比べてみると、何だか自由度が増しているというか、設定へのインパクトを重視しているようにも見える。

 もっとも、前者のように教師に対して淡い恋心を抱くというのは、わりと現実でも起こりうるポピュラーなシチュエーションなだけに、いかにも少女漫画“らしい”設定と言えるだろう。しかしこれが警官相手となると、もはや一種のフェティシズムを感じつつも、果たして倫理的にセーフなのかと心配になってしまうものだ。

 そんな余計な心配も束の間、この2時間強の映画はとんでもない急展開を繰り返す。友人に誘われて“22歳の童顔大学生”のふりをして合コンに参加した16歳の主人公が、年上の男性に興味を示す。ふたりで帰る道すがら、自分が16歳の高校生だと明かすとたちまち彼の態度が豹変し、キツい口調で自分を突き放すのである。とりあえず、現実世界では正真正銘“22歳の童顔大学生”である土屋太鳳が、16歳の役を演じ、リアルな自分と同じ設定を二重に演じるというのはなかなか面白みがある。

 逃げるようにその場を去った彼女は、町のヤンキー(古臭い言い方だがいかにもそんな感じの連中である)に絡まれ、そこに例の彼が登場。なんと彼は警官だったということがわかったと同時に、頭を殴られ病院に運ばれるヒロイン。目を覚ますと、付き添ってくれた彼から、結婚しようと突然言われる。この長々と書いたあらすじは、映画の中ではわずか10分ほどで起こることである。

 作品に触れる前のイメージである“警官と女子高生の恋愛模様”を序盤で片付けてしまったということは、作品の本題は“倫理や道徳を(合法的にといえど)超越することがいかに難しいのか”ということなのだと、この辺りでようやく気が付かされる。とはいえ、結婚したにもかかわらず、一向に男女の関係にならないふたりの姿に観客がヤキモキするのがこの映画の楽しみ方だとするならば、恋愛映画としては実に物足りない。だがこれを、恋愛ベースのコメディ映画だと捉えれば、いくらか合点がいくのである。

 中盤の目玉となる文化祭の場面で、チャラい学生服姿を披露した亀梨和也と、河童のコスプレをした土屋太鳳が理科室に逃げ込む。雰囲気に流されれば、たとえば先日の『一週間フレンズ』の図書室のシーンのような良いムードが漂うこの場面で、亀梨の口元に当たるのは土屋の唇ではなく、河童のクチバシ。それを外した土屋にすかさず亀梨がツッコミを入れて我に返るという、なかなかシュールな場面であった。

 そうなるとこの映画の落としどころは、このふたりが“普通”の恋愛模様をスタートさせる(=キスをする)ところなのだとわかる。序盤で、理想のプロポーズのシチュエーションを語る土屋演じる主人公。それをすべて逆行していくふたりを、いかにドラマチックに描くか、というのが作品の軸にあると見えた。それならば、もっとコメディ色を強めて振り切ったほうが、主演ふたりの個性もより一層活きたことだろう。

 朝の連続テレビ小説『まれ』(NHK)でブレイクをし、『鈴木先生』(テレビ東京系)での小川蘇美のイメージを完全に覆した土屋太鳳。しかしその直後は、一昨年の『orange-オレンジ-』、昨年の『青空エール』と、“純愛系”少女漫画映画のヒロインを演じ、明るく前向きではあるが、活発な一面は極力抑えてきたように思える。しかし、彼女の良さはアクティブな役でこそ引き立つのだ。そう考えると、本作はもちろんのこと、これから立て続けに公開されるコメディ路線の作品はいずれも、彼女の本領が発揮されるはずだ。

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