木村拓哉と浅野忠信の友情に感動! 『A LIFE』は男の絆を描いた“青春”ドラマだった

『A LIFE』最終回を終えて

 木村拓哉主演ドラマ『A LIFE〜愛しき人〜』(TBS系)が3月19日に最終回を迎えた。沖田にオペを任せると告白した深冬の決断や、これまでの陰謀を暴露された壮大が病院を追い出されるなど、最終回を目前に怒涛の展開を見せた第10話。最終回では、脳腫瘍を患った壇上深冬(竹内結子)の手術、沖田一光(木村拓哉)と壇上壮大(浅野忠信)の因縁、家族や病院内の不和……それぞれの抱えていた問題が解消され、すべての登場人物たちが新たな目標や未来に突き進んでいく結末が描かれた。

 深冬と沖田の目の前で壇上虎之助(柄本明)から病院からの追放を宣言された壮大は、自暴自棄に陥り、深冬のオペのことも投げ出して病院を立ち去る。引き止める沖田に対しても、「出てけって言われたんだ、この病院を出ていくよ」「(深冬のオペは)お前がやれよ」と言い放ち、さらには「もう誰も俺のことなんか必要としてない」「俺の気持ちはお前にはわからない」と言い残して実家の病院に帰ってしまうのだ。そんな壮大の苦しみを一番理解していた榊原実梨(菜々緒)は、かつて壮大が拳で開けた壁の穴=壮大の心の穴とたとえ、「副院長の心にも穴が空いてるんですよ」と深冬に伝える。

 相変わらず子どものような言動が目立つ壮大。ただ、必死に努力しても父親から認めてもらえない青年時代を過ごし、最愛の人やスタッフの信頼をどんどん獲得していく沖田のカリスマ性を目の当たりにする中で、自分には存在する価値がない、と自信喪失に陥ってしまう気持ちはわからなくもないし、一方的に彼の行動を非難することはできない。そもそも、これまでの壮大の言動や感情が揺れる出来事を振り返ると、彼がポストや病院の名声に執着する理由は、多くの人から認められたい、周りの人間から愛されたいという承認欲求が根本にあると想像できる。だからこそ、自分にないものを持つ沖田に対して必要以上に対抗心を燃やすし、今回の深冬の告白や虎之介の宣言は今まで以上に壮大の心を深く傷つけたのだ。

 そして、壮大不在のまま深冬のオペは始まる。手術室に向かう最中、いままで沖田を憧れの存在として見ていた井川が、対等な立場から沖田を勇気付ける。このようにサブキャラクターの成長や変化を何気なく入れてくるところは、ここまで見続けてきた視聴者にとっても嬉しい演出ではないだろうか。このまま無事成功するのではないかと思わせたオペだが、いくら腕が良い沖田でも専門外の難易度の高い施術には苦戦を強いられることになる。3つに分かれた腫瘍を一度にすべて取り除くのは難しいと判断した沖田は、選択の余地なく一度オペを終了。自分の力量不足を実感すると共に、深冬や家族の思いを伝えるため、壮大を直接迎えに行くことを決める。

 そんな状況をつゆ知らず、壮大は沖田や深冬が心配して送ったメールも無視し、実家の病院に引きこもって酒に溺れる。迎えに来た沖田にも、無精髭が伸びた無様な風貌で「なにしにきたの? 俺のことは俺が考えるからさ」と白々しい言葉を吐き、自分の努力は誰にも認められないと情けない発言を連発する。しかし壮大を信じると決めた沖田は、壮大に昔から憧れていたこと、深冬がオペの担当に沖田を選んだ理由や自分の弱さを告白し、彼女の想いが詰まったノートを壮大に渡す。沖田の言葉や深冬の思いを受け取った壮大は、今までずっと自分を苦しめてきた呪縛からようやく解放されるのだった。

 深冬の2度目の手術が迫る中、手術室の前で待つ沖田の前にとうとう壮大が現れ、ふたりは力強い抱擁を交わす。沖田はサポートに回り、壮大が腫瘍を摘出、ぶっつけ本番でありながらも、日本屈指の名医が見事な連携を見せ手術は成功する。手術直後に壮大は沖田へ一言「ありがとう」と素直に感謝の言葉を述べ、沖田も「お前は最高だよ。外科医としては」と冗談交じりに声を掛ける。その後、壮大は深冬との関係をより深いものとし、羽村と共に理想の病院を作ることを決意。一方、深冬の病気だけでなく、壮大の心の闇や病院に蔓延していた悪弊を取り除いた沖田は、さらなる高みを目指してシアトルへ戻ることを決める。

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