『山田孝之のカンヌ映画祭』松江哲明監督インタビュー「映画界への“問い”になってくれれば」

『山田孝之のカンヌ映画祭』松江哲明監督インタビュー「映画界への“問い”になってくれれば」

日本映画界への“問い”

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−−『北区赤羽』、『おこだわり』と手がけてきて気付いた、毎週放送のテレビ作品ならではの特色は?

松江:『北区赤羽』は4時間半の作品を分割して12話にしていました。そのため放送時は撮影からずいぶん間が空いていたのですが、「山田孝之を探しに赤羽に行きました」「赤羽に出てくる方に会いにきました」という声が多くて。視聴者の方々は毎週の放送を、リアルタイムの“現実”のように感じて見ていることが意外に感じました。

−−毎週の放送を楽しみにすることも、視聴者の生活の一部になっていくから、そういう感覚を抱くのかもしれません。

松江:なので、『カンヌ映画祭』も“引っ張って見せる”ことが面白いのかなと。ドキュメンタリーってドラマ性がないと思われているからこそ、そこを描くことは意識しています。河瀬さんの「私と(映画を)やる?」って言葉でその回が終わったら、びっくりするじゃないですか。撮った映像を見てそういうシーンがあると「編集点が見えた!」と思って、そこに向けて構成したりします。編集点を“見つける”という作り方は、今までとは違いますね。会議のシーンなども、芦田さんが最後に言った言葉でシーンを切っておくと、CMにいけるし、その回のオチにもなる。

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−−“編集力”を駆使していると。ほかに工夫しているところは?

松江:ドキュメンタリーって、意味が分からない素材もあるんですが、それが編集の妙で重要なパーツになるときがあるんです。例えば、山田君と芦田さんが本屋に行って買い物をした後に公園で話しているシーン。あのシーンは何も考えずにふたりが仲良くなる過程を撮っておこう、というだけのものでした。でも、ああいった撮影時にはよく分からない素材を挿入すると、ドキュメンタリーって面白くなるんです。

−−そういった遊びのシーンが入ると、作品の風通しがよくなりますよね。それはテレビドラマでも大事な要素だと感じます。

松江:当然、使ってないカットは数多くあるんですが、遊びが感じられるカットを選ぶのは大事なんです。不穏な回のエンディングロールには芦田さんの可愛いカットを選んだり(笑)。

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−−芦田さんはすごいですよね。男衆だけでやっていたら、もっと殺伐としたものになっていたと思います。

松江:芦田さんを呼ぼう、と考えた山田君の嗅覚はすごいです。「カンヌ」と「芦田愛菜」を組み合わせる、この発想、普通は思いつかないですよ。

−−『カンヌ映画祭』を通して伝えたいことは?

松江:この題材は映画として作りたくないと、最初に思いました。山田君が「カンヌ」と言葉にした時点で、これは“テレビ”だと。映画の批評を映画でやっても、それは内輪ものにしかならない。映画の批評をテレビでやることによって、自分たちを俯瞰することもできる。去年、『シン・ゴジラ』や『君の名は。』が大ヒットしましたが、どちらの作品もある意味では予算のある“自主映画”的な作り方でした。単館系作品では異例の大ヒットランを続けている『この世界の片隅に』においては、クラウドファンディングで資金を集めて制作した、まさに自主映画です。これらの作品を含めて、2016年は日本映画が面白いとされた1年でしたが、本来であればこういった作品が1億円規模のものから生まれるのが望ましいと僕は思います。だが、それは難しい。ならばどう戦うのか。『カンヌ』ではそういったことを意識せざるを得ないですね。
 デジタル技術の発達で、誰でも映画を撮れる時代です。かつて、映画を撮って劇場で公開する、そこには大きな覚悟と資金が必要でしたが、今は手軽な資金でずっと“自主映画”としてもやっていける。映画を作ることの不自由さと自由さを感じつつ、一方で、これからの映画作りは更に変わっていくという確信もあります。かといって、『カンヌ映画祭』の山田君の暴走こそが映画作りの理想というつもりは当然ありません。何を選ぶのか、なぜ作るのか。少しでも本作が映画界への“問い”になってくれればいいと思っています。

(取材・麦倉正樹、構成・石井達也)

■公開情報
『山田孝之のカンヌ映画祭』
毎週金曜 深夜0時52分~
出演:山田孝之、芦田愛菜、ほか
監督:山下敦弘、松江哲明
構成:竹村武司
(c)「山田孝之のカンヌ映画祭」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/yamada_cannes/

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