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2017年アメコミ映画のテーマは“多様性”? 杉山すぴ豊が“ヒーローと時代のシンクロ”を考察

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 日本でも映画の1ジャンルとして定着した感のあるアメコミ・ヒーロー映画。2017年も話題作が続々と登場です。

 面白いことに、こうした映画はアメリカの世相や気分と妙にマッチすることが多いのです。アメコミ映画の先がけは1978年の『スーパーマン』ですが、あのころはアメリカ建国200周年のお祭り気分の余波がまだあったのでしょうか、基本的に明るい映画になっていました。

 一方89年の『バットマン』。あのときアメリカは財政的に“ふたごの赤字”であり、また米ソ冷戦が終結に向かうなど経済的にも政局の面でも混沌としていて、バットマン自体もスッキリしない世界の中でもがいていました。以後00年のミレニアムという新時代の始まりのときに新人類を描いた『X-メン(1作目のみ“メン”表記)』が大ヒット。

 911テロの傷を癒すかのように悩めるヒーロー『スパイダーマン』が02年に歴史に残る大ヒット。そして08年リーマン・ショックで大企業の社会に与える影響の大きさが問われ、オバマ大統領という新リーダーに世界が期待した年に、大企業のCEOヒーロー『アイアンマン』『ダークナイト』がその年の興行界をにぎわすメガ・ヒットとなります。

 16年は『バットマンVSスーパーマン:ジャスティスの誕生』『シビル・ウォー:キャプテン・アメリカ』『X-MEN:アポカリプス』とヒーロー同士が対立する作品が公開され“あなたならどっちを応援?”パターンでしたが、米の激しい大統領選もまさにそういう展開でしたね。

 もちろん映画は公開年より前に準備されているので、こういうシンクロは偶然ではあるのですが、若干こじつけながらも、そのときのヒーローたちをふりかえるとその時代が見えてくると言うのはなかなか興味深いです。

 では、17年のアメコミ・ヒーロー映画から何が見えてくるのか?

 今年は『ドクター・ストレンジ』『レゴ ザ・バットマン ムービー』『ローガン』『ガーディアンズ オブ ギャラクシー リミックス』『スパイダーマン:ホームカミング』『ワンダーウーマン』『キングスマン2』『ソー:ラグナロク』『ジャスティス・リーグ』が公開されます。(『トランスフォーマー:最後の騎士王』や『パワーレンジャー』も期待ですが“純粋なアメコミ原作”ではないのでここからはずしています)。

 正直どれも楽しみでプライオリティはつけられないのですが、あえて注目すると『スパイダーマン:ホームカミング』『ワンダーウーマン』でしょうか? 前者は特殊な蜘蛛にかまれた若者がスーパーパワーを身につけ超人となり活躍する話であり、後者は神秘の女性戦士にしてプリンセスがこの世界に現れ、悪と戦います。

 コミックス史的には、それまでスーパーヒーロー物といえば“大人の男が主役”だったのに対し、スパイダーマンは十代の若者を主人公にすえ、ワンダーウーマンは世界初の女性スーパーヒーロー(ヒロインというコトバを使わず女性でもスーパーヒーローウーマンとかそういう言い方をします)だったのです。

 つまり若者視線・女性視線をヒーロー界に持ち込んだわけですよね。今度の映画もまさにそうで、今度のスパイダーマン映画はこの先の“アベンジャーズ”映画につながっていくし、スクリーンのワンダーウーマンも映画『ジャスティス・リーグ』に登場します。

 つまりマーベル&ディズニーの拠点となる“アベンジャーズ”、DC&ワーナーの核となる“ジャスティス・リーグ”を若者視点、女性視点でもアクセス出来るようにしているのです。

 だから『スパイダーマン:ホームカミング』は、主人公を今年20歳のトム・ホランドに一気に若返らせ、スーパーヒーロー物であり青春映画を目指します。初代スパイダーマンことトビー・マグワイアと2代目のアンドリュー・ガーフィールドの年の差は8歳ですが、アンドリューとトム・ホランドの年の差は13歳です。なんとトム君は体操の白井健三選手として同じ年ですから、その若さがわかるでしょう。

 一方『ワンダーウーマン』は監督に、シャーリーズ・セロンにオスカーをとらせた女性監督パティ・ジェンキンスを起用します。そうスーパーヒーロー物であり女性映画である、という意志表明にもとれるのです。

 この2作品以外だと不死身だったヒーロー“ウルヴァリン”がその能力を失った晩世を描くという異色作『ローガン』。これはまさにアンチ・スーパーヒーロー視点です。

 異世界・異次元でのヒーローたちの活躍がテーマの『ドクター・ストレンジ』『ガーディアンズ オブ ギャラクシー リミックス』『ソー:ラグナロク』は我々の常識を超えた所にも世界があることを語り、そして様々な大義・正義をせおった者たちが集まる『ジャスティス・リーグ』が17年をしめくくります。

 ヒーロー映画と言うのは“いい奴が悪い奴をやっつける”カタルシスがベースですが、時に一方的な正義感や価値観の押しつけになってしまうこともあります。17年はアメコミ・ヒーロー映画に様々な視点が持ち込まれる年になりそう。冒頭の時代とのシンクロで言えば、そういう多様性を人々が求めるのが17年と言う年なのかもしれません。

 どのヒーローの目線で冒険に参加するか、楽しみ方がひろがりそうですね。

■杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)
アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画に関するコラム等を「スクリーン」誌、「DVD&ブルーレイでーた」誌、劇場パンフレット等で担当。サンディエゴ・コミコンにも毎夏参加。現地から日本のニュース・サイトへのレポートも手掛ける。東京コミコンにてスタン・リーが登壇したスパイダーマンのステージのMCもつとめた。エマ・ストーンに「あなた日本のスパイダーマンね」と言われたことが自慢。現在発売中の「アメコミ・フロント・ライン」の執筆にも参加。Twitter:https://twitter.com/supisupisupi

■公開情報
『スパイダーマン:ホームカミング』
8月11日(金・祝)全国ロードショー
監督:ジョン・ワッツ
出演:トム・ホランド、ロバート・ダウニー・Jr、マイケル・キートン、マリサ・トメイ、ジョン・ファヴロー、ゼンデイヤ、トニー・レヴォロリ、ローラ・ハリアー、ジェイコブ・バタラン
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
(c)Marvel Studios 2016. (c)2016 CTMG. All Rights Reserved. 
公式サイト:Spiderman-Movie.JP

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