『ルーク・ケイジ』マイク・コルター インタビュー
『ルーク・ケイジ』主演俳優が語る、共感されるヒーロー像 「誰しも人生でやり直したいことがある」
マーベルコミック原作のドラマ『ルーク・ケイジ』がNetflixで9月30日から配信される。本作は、無実の罪で刑務所に収監され、人体実験によって銃弾やチェーンソーをも跳ね返す鋼の肉体と、トラックを軽々と持ち上げられる怪力を手に入れたルーク・ケイジの活躍が描かれる。『ジェシカ・ジョーンズ』にも登場したルークが、ジェシカとキルグレイブの戦いから数ヶ月後にニューヨークのハーレムへと移り住み、そこでヴィラン(悪役)の“コットンマウス”や“マリア・ディラード”と対峙していく中で、ルークの隠された過去も明らかになっていく。リアルサウンド映画部では、ルーク・ケイジを演じるマイク・コルターにインタビュー。『ジェシカ・ジョーンズ』との繋がりや、『ルーク・ケイジ』の魅力を語ってもらった。
「アメリカ人にとって“ルーク・ケイジ”は感情移入しやすいヒーローなんだ」
ーールーク・ケイジは、アフリカ系アメリカ人のスーパーヒーローの中でも古い歴史を持つキャラクターです。やはりマイクさんにとっても馴染み深い存在なのでしょうか?
マイク・コルター(以下、マイク):僕は田舎の方の生まれだから、幼い頃にコミックと触れ合う機会がとても少なかったんだ。だから、僕自身はルークケイジと共に育ったわけではない。それに小さい頃に僕が空想していたスーパーヒーローもアフリカ系アメリカ人ではなかったし、そもそも人種や肌の色を意識したことはなかったよ。たしかに一部の人たちの中には、自分の容姿と似ているヒーローの方が共感できる人もいると思う。きっと彼は、アフリカ系アメリカ人にとってユニークなキャラクターだっただろうけど、それ以外の人たちにとってもすごく新鮮なキャラクターであると僕は思うんだ。
ーーなぜそう思うのですか?
マイク:ほかのスーパーヒーローよりも早く登場していることと、ルークがアメリカで生まれ育ったキャラクターというところも大きいだろう。ルークがアメリカで生きることを経験しているキャラクターだからこそ、アメリカ人にとっては感情移入しやすいんだと思う。それにファンの方と触れ合う時、人種に関係なくみんなが『ルーク・ケイジ』を楽しみしていると声をかけてくれる。白人の高齢者に「ずっとこの瞬間を待っていた」と言ってもらえたこともあった。その時に、ルークは多くの人々に魅力を感じてもらえるスーパーヒーローなんだ、と実感したよ。
ーーアメリカに寄り添ったヒーローだからこそ、多くの方が共感できるのかもしませんね。
マイク:仮に彼がアフリカ系アメリカ人の支持を受けていようがいまいが、特定のコミュニティのために生まれたヒーローではないからね。人種や容姿にとらわれず、キャラクターの本質や魅力を捉えていくべきだと思う。僕自身は子どもの頃にブルース・リーが大好きだったけれど、その当時は僕とブルース・リーの容姿が違うなんて一瞬たりとも考えたことはなかった。単純に彼が大好きで、彼の動きをそのまま真似していた。キャラクターが持つ魅力をそのまま受け入れて、自分なりに共感できるポイントを見つけていくのが大事なんじゃないかな。
ーー共感ポイントという意味では、あなたはルークのどんなところに共感できましたか?
マイク:もちろん共感できるところはたくさんあった。演じるキャラから共感できるポイントを見つけることは、役者の役作りにとってとても大事なことだからね。そもそも僕が選ばれたのは、幸運なことにキャスティングの段階でマーベルの方々が、ルークにぴったりな資質を僕から見つけてくれたからだ。たとえば僕が共感できるところは、メインストリームの中に自分の身を置くことを躊躇するところかな。あと、僕はSNSをやらないのだけど、おそらく彼もやらないだろう(笑)。それに彼はすべての問題を自分が解決するべきではないと考えている。当事者が、自分自身の力で解決しなければいけないこともある、と。ルークほどの力があれば、日常的に悪い奴をかたっぱしから倒して、自分の考えを周りに押し付けることもできるだろうが、彼はそれが何の助けにもならないことを知っている。みんながヒーローになれるように、それぞれを導いていくことが自分の役目であると考えて行動するんだ。そんな抑制の効いた行動にはすごく共感できるよ。
ーー『ジェシカ・ジョーンズ』でもルーク・ケイジとして出演していますが、今回のドラマにはどんな影響がありましたか?
マイク:ジェシカ・ジョーンズの時は助演なので、距離をおいてルークを観察することができたと思っている。距離をとって観察してから実践することは、何事においても助けになるんだ。『ジェシカ・ジョーンズ』は、ルークのパーソナリティを捉える上でも、彼がジェシカや世界とどんな風に関わっているのかを見るという意味でも、良いウォームアップになったよ。それにジェシカとルークの関係性も面白い。ルックスも住む世界も違う彼らがなぜ惹かれ合うのか、ジェシカが彼に惹かれる理由を考えたりもした。彼自身がどんな人物なのかを、ルークの過去に踏み込むことなく演じられたことが、今回の作品では非常に助けになっている。逆に、今回はルーク自身としっかり向き合うことができたよ。
ーー『ルーク・ケイジ』の最大の魅力はどこにあるのでしょうか?
マイク:人生の中でやり直したいと思っていることは、みんなそれぞれ持っていると思うんだ。ルークも同じで、妻が殺害されたことや無実の罪で投獄されていたことなど、暗い過去を持っている。やり直したところで上手くいくかはわからないが、人生をやり直したいと思う気持ちが、ルークと重なり共感できるのではないだろうか。ドラマの中で彼は、人生をやり直す気持ちで自分のやりたいことをやって、それに対して満足感を得ることができるか模索しているんだ。ドラマの序盤では、彼はなにも見つけられておらず、ニュートラルな状態にある。そこからある人物との出会いをきっかけに、ハーレムのコミュニティと触れ合うようになり、自分が必要とされる場所を見つけていく。求められることと、自分の目的意識が重なることで、人の役に立ちたいと思うようになっていき、次第に心の平穏も見出していくんだ。ルークはずっと何に対してもブルーな男だったが、ここにきて自分の人生を大切なものにかけたいと思うようになるんだけど、そういう部分が多くの人の心を捉えていると思う。