『ケイゾク』形式はケイゾクできる? 『IQ246〜華麗なる事件簿〜』に見るキャラクタードラマの功罪

海外ドラマや人気サスペンスのパロディ満載だが、独自のテーマは?

 ほぼ出そろった秋の連続ドラマ、テレビ朝日の2大看板シリーズ『ドクターX ~外科医・大門未知子~』、『相棒season15』を除くと、日曜劇場『IQ246〜華麗なる事件簿〜』(TBS)が初回視聴率13%で首位に。第2話も12.4%と好調だ。

 このドラマは、主演の織田裕二が“天才的な頭脳を持つ貴族の末裔”である沙羅駆(しゃらく)というこれまでにない役柄に挑戰し、そのエキセントリックな演技で賛否両論を呼んだ。また、ネット上では、ディーン・フジオカが演じる執事がかっこよく、土屋太鳳が演じる沙羅駆の護衛係である刑事もかわいいという反応が多く、視聴者の萌えを呼び起こすキャラクタードラマとしてはまずまずの成功を収めている。

 『IQ246』は、<法門寺 沙羅駆(ほうもんじ しゃらく)/織田裕二=シャーロック・ホームズ>や、<和藤 奏子(わとう そうこ)/土屋太鳳=ワトソン>など、キャラクターの名前からして明らかに『シャーロック・ホームズ』シリーズのパロディだ。名作や人気作のパロディ/パスティーシュ作品の中にも、ベネディクト・カンバーバッジが主演する英国のドラマ『SHERLOCK/シャーロック』など優れた作品は存在するが、このドラマに関しては、それでもどこかで見たような設定、場面が多く、まるで既存作品のパッチワークのようにしか見えない。原作を持たないオリジナルドラマの新作なのに、既視感に満ちているのだ。

 本家コナン・ドイルの小説は、既に欧米でもパブリック・ドメインの扱いになっていて、著作権上、問題はないかもしれない。しかし、女性監察医の森本(中谷美紀)が沙羅駆にほれこみ、彼に頼まれると職務違反をしてでもその要望に応えようとするなど、『SHERLOCK―』の独自設定とも共通する点が多い。第2話で展開した薬物による自殺強要事件は、ドイルの小説『緋色の研究』より、『SHERLOCK―』の第1話「ピンク色の研究」と設定が近かった。ちなみにホームズの相棒ワトソンが女性に変更されているのも、アメリカのドラマ『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』と同じアレンジだ。コナン・ドイルの二次創作的作品である『SHERLOCK―』などをさらにパロディにするということは、ドラマの作り方としては安易だと言わざるをえない。

 それならいっそ英国BBC局など権利元に許諾を取って、日本版『SHERLOCK―』と銘打ったほうがよかったのではないだろうか。日本のテレビ局ではこの数年で海外作品の日本版を作る動きが進み、今クールでも、ドイツのドラマを原作とする『THE LAST COP/ラストコップ』(日本テレビ)、ウクライナのドラマの日本版『スニッファー 嗅覚捜査官』(NHK)が放送されている。コンプライアンス意識は進んでいるはずなのだが、本作はそれに逆行するやり方とも言える。

 他にも、『IQ246』には、日本の『相棒』や『古畑任三郎』の影響も色濃く出ていて、織田裕二の過去作品のパロディも満載だ。コントのようなドラマと割り切って見る分には良いのだろうが、何を描きたいのかテーマもビジョンも見えず、民放屈指の伝統枠である日曜劇場の作品としては物足りなく感じられる。おそらく本作の企画が通った背景には、同枠2月クールの『99.9-刑事専門弁護士-』がヒットしたということもあるだろう。「日曜の夜には、気軽に楽しめる作品を」という狙いは正解だと思うが、それでも『99.9』には刑事裁判の高すぎる裁判有罪率という問題提起もあった。『IQ246』には現実とリンクする何かがあるのだろうか。

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