16年目の『相棒』は大波乱の予感! 『相棒15』の見方とツッコミどころ指南
先週の水曜日(10月12日)から、遂に15シーズン目に突入した『相棒』。これで土曜ワイド劇場枠の第1回が放送されてから、実に16年目を迎えたことになる。そろそろギネスに申請をしたらいろいろ認定されそうなタイミングだが(なにしろ2002年にシーズン1が始まって以来、テレビシリーズは1年も休むことなく続いているのだ)、今のところシリーズが終わる気配はどこにもない。
とはいえ、そんな『相棒』は今、何度目かの激動の季節を迎えている。一つは、以前にはスピンオフ作品として主役映画まで作られた鑑識の米沢守(六角精児)が、前シーズンを最後にレギュラーではなくなったことだ。シーズン当初からいくつものお約束で成り立ってきた『相棒』だが、そんなお約束の中でも杉下右京(水谷豊)と米沢守の落語談議や鉄オタ談議を交えた軽妙なやりとりは、事件によってはシリアスでダークな空気に包まれがちな『相棒』の作品世界にあって、重要な息抜きシーンの役割を担ってきた。もっとも、米沢守は警察組織(異動後は警察学校教官を務めている)の中にはいるので、警察庁に異動した神戸尊(及川光博)同様、今後も要所要所で顔を出してくる可能性もある。
一方、今シーズンから新たにレギュラーに加わったのが警視庁総務部広報課課長の社美彌子(仲間由紀恵)。水谷豊と反町隆史と仲間由紀恵、さすが人気シリーズと言うべきか、これでドラマの主役クラスの役者が3人も揃ったことになるが、『相棒』ファンならご存知のようにこの社美彌子というキャラクターは「ロシアのスパイとの私的な関係」という「時限爆弾」を抱えている存在で、レギュラーとなったばかりの『相棒15』初回から、彼女のもとに謎の手紙が届いたり、庁内で彼女の監視をしていた男が何者かに土に埋められたりと、その周囲にはきな臭さが濃厚に立ち込めている。一時期、週刊誌などのメディアでは「次の相棒役を演じるのは仲間由紀恵では?」という憶測記事が頻繁に書かれていたが、それどころではないのである。
社美彌子の再登場は事前の番組プロモーションでも公にされていたのでサプライズではなかったが、驚いたのは前シーズンの15話「警察嫌い」の主要ゲストだった警察嫌い男=青木年男(浅利陽介)が、今シーズンからサイバーセキュリティー対策本部の特別捜査官として警視庁に潜り込んでいることだ。特命係に激しい恨みを持っているその男の動きは、『相棒15』におけるもう一つの「時限爆弾」と言えるだろう。
昨年の同時期、自分は『相棒』には横軸の物語(個々のエピソード)と縦軸の物語(シリーズを通じての大きな展開)があって、近年はその縦軸の物語の吸引力と脚本家同士の連携が弱まっていると指摘した(新相棒・冠城亘(反町隆史)を迎えた『相棒 14』、その成功の鍵はどこにあるか?)。その観点でいくと、今シーズンは新たな縦軸の物語、それも特命係の2人にとても近い場所である庁内の人物の物語を、第1話から同時に2つも起動させたことになる。当然、今後はエピソードごとに脚本家が入れ替わっていくわけだが、そこでどのような連携がはかられていくのかに特に注目していきたい。
ところで、『相棒15』ではもう一人、新たなキャラクターとして警視庁副総監の衣笠藤治が登場しているが、その役を演じている大杉漣は、13年前の『相棒2』第6話「殺してくれとアイツは言った」の回でハードボイルド作家の犯人役を演じていた(最後に刺されて死亡)。学生時代に小野田官房長官(岸部一徳)の同級生であったという設定も含め、かなりインパクトがある役だったので、これはなかなか大胆な再キャスティングと言える。もっとも、『相棒』オールドファン以外の多くの人にとっては、今や大杉漣と言えば『シン・ゴジラ』での内閣総理大臣役が記憶に新しいだろう。『シン・ゴジラ』と同じく、基本的に会議室や執務室の椅子に座って報告を受けたり指示を出したりするだけなので、「どうして警視庁に総理大臣が出向いてるんだ?」と混乱をきたす視聴者もいるかもしれない。