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『君の名は。』なぜ社会現象に? 映像プロデューサーが考察する、大ヒットした3つの理由

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理由3:メジャー化による作品の変化

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 これまでの新海誠作品と比べて強く感じたのが、ハッピーエンドに対する素直さだ。例えば『秒速5センチメートル』におけるなんとも苦い結末(幼いころからお互いを思い合っていた男女は、成長とともに様々な差を埋められなくなり、男は現実に敗れ過去の女の幻想にすがり、女は他の男と結婚する)は、本作との強い対比をなす。ラストシーンの、すれ違うふたりがお互いに気づくか気づかないかの結論がそれを象徴している。その苦さ、言い換えれば、現実に対する諦観こそが新海誠の作家性であり、逆説的かもしれないが、現実感を希薄にできるアニメーションという手法だからこそ、諦観がいきるのでは、と考えていた。

 この作品を見て涙を流し、美しいものを信じて、いつか自分もああいった世界の登場人物になりたいと願う気持ちを否定する気はない。しかし、人はずっと美しくはないし、いや、美しい時もあれば醜い時もあって、それを肯定することが生きるということなのだとしたら、美しい瞬間だけを切り取った本作は、やはり、これまでの新海誠作品とは異なるのだろう。

 世界はどんどん複雑になってきている。何が正しいのか、一概に言えないことばかりだ。そんな時代だからこそ、正しい思いが真っ当に成就することを、新海誠は描いてみせたのかもしれない。諦観ではなく、美しい瞬間だけを切り取って、希望を示した。

 昨今、SNSの浸透により、口コミの重要性がさらに増している。映画にしたって、食事にしたって、サイトに載っている点数やレビューを踏まえて、人々は選択していく。言い換えれば、人は見たいものだけを見るようになった時代とも言えるだろう。東宝の夏のアニメという大メジャーな桧舞台に立つにあたり、このことに自覚的であったからこそ、作風に変化をもたらし、メガヒットを生み出したのかもしれない。

■昇大司
1975年生まれ。広告代理店にて、映像作品の企画などを行う。好きな映画は『アマデウス』『ラストエンペラー』『蜘蛛巣城』など。

■公開情報
『君の名は。』
全国東宝系にて公開中
声の出演:神木隆之介、上白石萌音、成田凌、悠木碧、島崎信長、石川界人、谷花音、長澤まさみ、市原悦子
監督・脚本:新海誠
作画監督:安藤雅司
キャラクターデザイン:田中将賀
音楽:RADWIMPS
(c)2016「君の名は。」製作委員会
公式サイト:http://www.kiminona.com/

      

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