映画に選ばれた女優、広瀬すず−−『四月は君の嘘』で見せた“共感を求めない”演技の凄み

映画に選ばれた女優・広瀬すず

 劇中には「度胸橋」と呼ばれる橋の上から、少女が、それに続いて少年が、川に飛び込むエピソードがある。広瀬すずの演技を見ていて感じるのは、ある種の“身投げ”感だ。“共感”を求めず、ひたすら“他者”を“他者”として成立させようとするその姿は、ダイブによく似ている。

 少年は少女に言う。「君は自由だね」と。少女は答える。「私が自由なんじゃなくて、音楽が自由なのよ」と。

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 “共感”に束縛されない広瀬の演技は自由を感じさせるが、それは彼女が自由なのではなく、彼女が自由な場所に向かって、その肉体を投げ出しているからなのかもしれない。

 彼女が、映画の何に自由を見つけているかは、9月17日に公開される『怒り』において、森山未來を相手に繰り広げた、深遠かつ解放的な視線劇を目の当たりにすることで、さらに強く体感できる。

 彼女が、演技の場に自由を見出すかぎり、このダイブは繰り返されるはずだ。だが、その自由が見えなくなったとき、いつでもきっぱり、表現をやめてしまう気もする。広瀬の演技を見ていて、はらはらせずにいられないのは、つまりはそういうことなのだろう。映画が、広瀬すずにとって自由を信じられる場所であり続けることを祈る。

■相田冬二
ライター/ノベライザー。雑誌『シネマスクエア』で『相田冬二のシネマリアージュ』を、楽天エンタメナビで『Map of Smap』を連載中。最新ノベライズは『追憶の森』(PARCO出版)。

■公開情報
『四月は君の嘘』
2016年9月10日(土)公開
監督:新城毅彦
脚本:龍居由佳里
原作:『四月は君の嘘』新川直司(講談社「月刊少年マガジン」所載)
出演:広瀬すず、山﨑賢人、石井杏奈、中川大志、甲本雅裕、本田博太郎、板谷由夏、檀れい
配給:東宝
(c)2016映画「四月は君の嘘」製作委員会 (c)新川直司/講談社
公式サイト:kimiuso-movie.jp

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