『HiGH&LOW THE MOVIE』混沌とした物語の高揚ーー“主役不在の超群像劇”はなぜ求められた?

『HiGH&LOW THE MOVIE』の新しさ

 ただ、これはあくまで、ムゲンというチームの栄光と挫折の物語として理解した場合の『HiGH&LOW』でしかない。実際に見ている時の印象は毎回バラバラで、個別のエピソードごとにフューチャーされるキャラクターはいるのだが、物語全体の中心となる主人公がいないため、一度観ただけでは誰が何をやっているのかさっぱりわからない。 

 もちろん、EXILEや三代目 J・Soul Brothersのメンバーや窪田正孝や林遣都といった俳優のファンにとっては、彼らの見せ場を追うだけでも充分楽しめるだろう。しかし、全体を俯瞰して見た時に、ここまで混沌とした誰にも焦点が当たっていない物語は前代未聞なのではないかと思う。こう書くと、ビジュアルとアクションは破格だが、物語としては失敗作だと言っているように聞こえるかもしれない。しかし、繰り返しになるが、そう言い切れないところが『HiGH&LOW』の面白いところだ。むしろ、既存の物語に忠実な琥珀のエピソードの方が冗長で、無数の男たちが蠢くことで生まれる躍動感にこそ、可能性を感じた。

 本作が、“主役不在の超群像劇”となったのは、それこそがEXILE TRIBEの本質だったからだろう。同時に、こういった物語が求められるのは、時代の要請ではないかとも感じた。大河ドラマの『真田丸』(NHK)や映画『シン・ゴジラ』など、今年ヒットしている物語作品は群像劇が多い。これは政治や組織の有り方について、じっくりと考えたいという観客の要望に応えているということもあるだろうが、SNSが可視化する複雑な人間関係を物語に落とし込んだ結果、必然的に生まれたものだとも言える。

 同じ大規模編成のグループアイドルAKB48は、それをフィクションではなくドキュメンタリーという形式で見せていたが、EXILEは虚構性の高い物語に落とし込むことで成立させた。これは、同じ大規模グループでもEXILEの方が、より作り込まれた表現をみせるパフォーマンス集団だったからだろう。10月には早くも続編映画が公開されるが、本作で開花した超群像劇がどこまで広がるのか楽しみである。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■公開情報
『HiGH&LOW THE MOVIE』
公開中
出演:AKIRA、青柳翔、TAKAHIRO、登坂広臣、岩田剛典ほか
企画プロデュース:EXILE HIRO
監督:久保茂昭
アクション監督:大内貴仁
脚本:渡辺啓、平沼紀久、TEAM HI-AX
配給:松竹
(c)2016「HiGH&LOW」製作委員会
公式サイト:http://high-low.jp/

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