成馬零一の直球ドラマ評論
バイオレンスに徹したEXILE『HiGH&LOW』 ドラマ要素を切り詰めて獲得したものは?
『HiGH&LOW』は、EXILEのリーダーとしてEXILE TRIBEを束ねるLDHの代表取締役社長のHIROが総合プロデュースを務めるビッグプロジェクト。EXILE TRIBEをはじめ、窪田正孝、小泉今日子、ゴールデンボンバーといった豪華キャストが出演し、様々なメディアコンテンツで物語が展開されることが話題となっている。
来年7月には映画公開が決まっており、Huluでの特別版ドラマの配信、別冊少年チャンピオン&ヤングチャンピオンでの漫画連載、Instaguramでの写真の公開、そして劇中でかかっている音楽をまとめたオリジナルアルバムの発表と、イベントが目白押し。もちろんEXILE率いるLDHならではのライブツアーを予定している。
その中心に置かれているのが現在、日本テレビ系で放送中の深夜ドラマだ。
舞台は、かつて「ムゲン」というギャングチームと、「雨宮兄弟」という二人組のギャングが戦いを繰り広げていた、とある区域。ある事件をきっかけに突如「ムゲン」が解散し、「雨宮兄弟」も姿を消した。その後、「山王連合会」「White Rascals」「鬼邪高校」「RUDE BOYS」「達磨一家」という5つのチームがしのぎを削るようになった。
テレビドラマでは、おそらくクライマックスとなるであろう激しいギャングチーム同士の抗争が第一話で描かれており、そこから時間をさかのぼり、抗争のきっかけとなった鬼邪高校のチハル(佐藤大樹・EXILE)と山王連合会のヤマト(鈴木伸之・劇団EXILE)の出会いが二話では描かれている。
今後は各ギャング同士の激しい抗争が描かれることとなるのだろうが、この時点で何を置いても印象に残るのは、そのアクションシーンだ。
EXILEのPV『EXILE PRIDE~こんな世界を愛するため~』等の作品でMTV Video Music Awards Japan2014を受賞している映像ディレクター・久保茂昭が監督を務めているためか、どこを切ってもEXILE印といった感じのカッコいい映像で、特に不良が集団で殴りあっている場面などの、モブシーンの出来がすばらしい。
なんというか深夜ドラマとは思えなくくらい映像がゴージャスなのだ。
もちろん『クローズZERO』や『TOKYO TRIBE』等の映画からの影響は強くうかがえ、物語自体はヤンキーモノの変種でしかない。しかし、彩度を落とした暗めの映像で見せるPV的でありながら、暴力の香りがうかがえるアクション映像には、今までのEXILEドラマとは違う気迫のようなものを感じられる。