松本潤『99.9』の成功で、嵐の30代キャリア見えた! ドラマ評論家「SMAPとはまた違う方向へ」

嵐
(C)タナカケンイチ

「松本潤がTBSの日曜劇場『99.9-刑事専門弁護士-』で成功したことは、30代になった嵐のメンバーが今後、役者としてどう活躍していくのかを考えるうえでも重要なポイントになったといえます。SMAPの木村拓哉が2000年に『ビューティフルライフ』で日曜劇場への進出を果たしたことを契機に、メンバー全員がこれまでの若者向けドラマから、30~40代の大人やファミリー層をターゲットとした作品へとシフトしたのと相似するキャリアデザインが、ようやく嵐にも見えはじめたという印象です。おそらく本作の成功が突破口となって、今後は他の嵐のメンバーも日曜劇場での主演作が続いていくのではないでしょうか」

 こう語るのは、『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)などの著書があるドラマ評論家の成馬零一氏。『99.9』は平均視聴率19.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、今年の民放連続ドラマ1位に輝いた。

 松本はTBS『花より男子』でのブレイクを契機に、少女漫画原作のドラマを中心にヒーロー役を演じ、ほかのメンバーに先駆けてドラマ界で活躍し始めた。多くの女性ファンの支持を得て、2000年代の若者向けドラマでは圧倒的な存在感を示し、いまなお確実に視聴率を稼ぐことができる俳優として知られている。一方で、松本が演じるキャラクターは男性視聴者の支持を得難いものでもあったと、成馬氏は続ける。

「『99.9』で松本が演じた深山大翔の最大の特徴は、モノローグがなく心情がわかりにくいことです。松本が主戦場としてきた少女漫画原作のドラマは、心情をわかりやす見せることが求められるため、モノローグで繊細な内面を表現する演出が多用されますし、台詞で自分自身のことをたくさん話します。ただ、こういう演出は、心理がダダ漏れになるので、恋愛ドラマやナイーブな内面を描く青春ドラマに興味を持てる若者層には受けがいいのですが、そのような心理的葛藤に関心が持てない年配の中高年の男性にとっては、興味のもてないものでした。一方、今回の松本が演じた深山は、何を考えているのかがイマイチわからないタイプ。事件への憤りや被害者への同情心が見えづらく、事件の立証に没入する深山の姿は、『ドラゴンボール』や『ワンピース』といった少年漫画の主人公に近いんじゃないかと思います。変に湿っぽくならない演技は、日曜劇場のメイン視聴者層である中年男性にとっても馴染みやすく、松本自身にとっても新境地だったといえるでしょう。しかしながら、まったく感情がないキャラクターではなく、ちょっとした表情や仕草で内面を匂わせるという、高度な芝居を実は見せていました。当初はライバル関係になると思われた香川照之演じる佐田篤弘とは、回を重ねるごとに仲良くなり、メイン視聴者層から見たときにかわいい弟分のように映るのも、うまい見せ方です」

 キャリアデザインの相似性から、世間では松本潤を“ポスト・キムタク”と呼ぶ向きもある。しかし、キャラクター設定や役どころは、木村やほかのSMAPメンバーのそれとは必ずしも同じではない。先のコメントにある“かわいさ”がそのキーワードだ。

「松本だけではなく、嵐のメンバーはみんな良くも悪くもあどけなさが抜けず、30代になっても大人っぽい役柄がハマらないのが難しいところでした。SMAPのメンバーは30代以降、年相応の渋さやセクシーさを打ち出しましたが、嵐はなかなかそういう方向にシフトできなかったんです。しかし今回、松本は自分の年齢層より上の世代からかわいがられながら、新たな役どころを成功させています。つまり、アイドルらしさを残しつつ、従来のファン層以外にも受け入れられるポイントを見つけ出したのです」

 同じことは、平均視聴率12.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)の好成績を記録した大野智主演の『世界一難しい恋』(日本テレビ)にもいえるという。

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