高畑充希演じる常子、男社会の厳しい現実にどう向き合う? 『とと姉ちゃん』第九週を振り返る

 就職した小橋常子(高畑充希)が、男尊女卑の会社で厳しい現実と衝突する姿が描かれた『とと姉ちゃん』第九週。

 浄書室の責任者である早乙女朱美(真野恵里菜)から、やっと清書の仕事を回してもらえた常子だったが、仕事の速度が遅いため、まずは書類整理からはじめるようにと言われ、タイプライターには触らせてもらえない。そんな時、男性社員から書類の整理を頼まれる。早乙女は人手が足りないからと、仕事を断るが、常子は手が空いていると言って仕事を受ける。書類が積み上げられた机の上から重要な資料を取り出して、明日の4時までに清書するように、と言われる常子。

 まずは机の上を整理して重要な書類を抜き出していくが仕事は結局片付かないため、家に仕事を持ち帰ることに。一睡もせずに資料を整理して、あとは会社で清書するだけだったが、タイプライターを使うことを早乙女に禁じられてしまう。それでも常子は手書きで清書して何とか仕事を成し遂げる。しかし男性社員の対応は「そこ置いといて」とそっけないものだった。

 翌日、早乙女は「手書きによる資料作成」と「他部署からの業務依頼を個人的に受けること」を禁止するという新しい規律を読み上げる。浄書室の秩序を守るために、横暴な男性社員と渡り合おうとする早乙女の立場を理解しつつも、どこか違和感をぬぐえない常子は祖母の青柳滝子(大地真央)に相談する。「男が悪いだ、女が駄目だ、の言ったところで、所詮この世には男と女しかいないんだよ。だったらうまくやってくしかないだろう」と滝子から言われた常子は、翌日、再び男性社員から手伝うように言われて、仕事を引き受ける。

 男性社員を拒絶しても私たちの立場がよくなる訳ではない、と言う常子に対して、早乙女は激しく反論するが、総務部長が常子の手書きの書類を「読みやすい」と褒めて、今後もよろしくと言ったことで、常子の手伝いは認められる。早乙女は「私とは考えがまるで違います。そこは譲るつもりはありませんから」と言うものの、常子の能力は認めるようになり、仕事も回すようになる。

 やがて時代は昭和14年に。鞠子(相楽樹)は無事、大学生となり、美子(杉咲花)も女学校に進学する。ヨーロッパでは第二次世界大戦が勃発し、日本では国家総動員法が成立。だんだん世の中は暗くなり、常子たちの生活にも戦争の影が迫っていた。

 常子の入社時に起きた騒動は、あらすじだけを抜き出すと、新人の常子が無我夢中でがんばったことで、職場で認められて、社内で対立する男女の架け橋になった話のように聞こえる。しかし、「甘いのよ。いいように使われてるのがわからないの? 私たちがこれまで、どれだけ理不尽な思いをしてきたか。雑用を押し付けられ、失敗の責任をなすりつけられ、何の評価も得られない。女だと言うだけで。昨日今日入ってきたあなたにはわからないでしょうけど」という早乙女の言葉の方が、はるかに重みと説得力があるため、後味の悪さが最後まで残る。

 今回描かれたのは「困っている人をほおっておけない」という常子の優等生的な振る舞い(それは朝ドラヒロイン的な振る舞いと言ってもいい)自体が男性社員からは付け込む隙となっていて、常子が働けば働くほど、女性社員の仕事が増えていくという悪循環だった。この悪循環の構造は、結局、最後まで解消されていない。給仕のおじさんが残業をする常子にキャラメルを渡す場面もいいシーンに見えるが、どこか誤魔化されているように感じる。結局、常子に仕事を頼む男たちは、最後まで変わろうとする気配を見せない。

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