高畑充希演じる常子、男社会の厳しい現実にどう向き合う? 『とと姉ちゃん』第九週を振り返る

 世の中、男と女しかいないのだから、うまくやっていくしかない。というのは正論だが、それが男の側が変わらなくてもいいという方便に利用されてしまうのだとしたら、それは問題である。

 働く女性の自立というメッセージを打ちだしながら、実はすごく保守的で、老若男女に好かれる優等生的な女性を主人公に据えている朝ドラの矛盾が、今回の対立には現れていた。そういった矛盾をあえて露呈させたと考えるならば、見ごたえのある週だったと言えよう。ただ、「わざと書類を机から落とす」といった、常子が女性社員から意地悪される場面は、余計だったのではないかと思う。ああいったベタなシーンを入れたせいで、女子社員が個人的な理由でいじわるをしているように見えてしまい、複雑な背景を矮小化しているように見える。

 西田征史は、自分がフィクションを作っていることに自覚的な脚本家で、うまくハマれば、落語のように気の利いた話になるのだが、悪く出ると、この女子社員のような記号的な描写になってしまう。今まで女性の自立の尊さを描いてきただけに早乙女以外の女性社員も尊敬の対象となるように見えないと、ここで描かれた問題の本質は伝わらないのではないかと感じた。もっとも、次週予告では早乙女が「私たちをクビにするなんてなんとも思ってないのよ」と言う場面があるので、問題はまだまだ続いていくのだろう。

 第二次世界大戦が勃発し、日本が戦争へと向かう中、職業婦人として働く常子たちと男たちとの関係がどのように変化していくのか注目である。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■番組情報
『とと姉ちゃん』
平成28年4月4日(月)〜10月1日(土)全156回(予定)
【NHK総合】(月〜土)午前8時〜8時15分
[再]午後0時45分〜1時ほか
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/totone-chan/

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