石田ゆり子、刹那の“キスシーン”に心奪われるワケ 『コントレール』は恋愛ドラマの傑作となるか
それにしても、近年の女優・石田ゆり子には、驚かされるばかりです。決して短くはないそのキャリアのなかで、どこか薄幸そうな女性、あるいは受身の女性を演じることが多かった彼女ですが、近年の彼女が演じる役どころは、それとは少し違います。たとえば一昨年、今回と同じ「ドラマ10」枠で放送された、脚本家・岡田惠和によるオリジナル作品『さよなら私』で、彼女は永作博美演じる親友の旦那(藤木直人)と浮気するキャリアウーマン……といった役どころから一転、その中身だけ永作博美と入れ替わってしまうという難しい役どころを好演していました。あるいは、久々のヒロイン役となった斎藤工主演のドラマ『医師たちの恋愛事情』で見せた、凛とした女医役。そして、映画『悼む人』で演じた、過去のあるミステリアスな女性(思えば、その相手役も今回と同じく井浦新でした)。かつて、往年の名コピーである「女房酔わせてどうするつもり?」を踏襲したウイスキーのCMで、世の男性たちの妄想を駆り立てた、その可憐さはそのままに、近年その表現の幅を確実に増しているように思える女優・石田ゆり子。ちなみに、『コントレール』の脚本家である大石静は、ドラマのホームページに、次のようなコメントを残しています。「この世の真実は、既成の倫理観や常識や安定などを、遥かに越えた所に存在します。視聴者の方には、その一線をドラマの中で越えていただければと思って書きました」。今後さらなる波乱が予想されるこの難役を、石田ゆり子は、果たしてどう演じきるのでしょうか? 物語のなりゆきともども、引き続き注目していきたいと思います。
■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「CUT」、「ROCKIN’ON JAPAN」誌の編集を経てフリーランス。映画、音楽、その他諸々について、あちらこちらに書いてます。
■ドラマ情報
『コントレール~罪と恋~』
NHK総合毎週金曜夜10時〜
脚本:大石静
出演:石田ゆり子、井浦新、原田泰造、ほか