『ディアスポリス』プロデューサーが語る、ドラマと映画を同時に制作するメリットとその難しさ

『ディアスポリス』Pインタビュー
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左から、西ヶ谷寿一氏、横山蘭平氏

 スペースシャワーTVの高根順次プロデューサーによるインタビュー連載「映画業界のキーマン直撃!!」第5回には、現在放送中のドラマ『ディアスポリス 異邦警察』のプロデューサーを務める、東京テアトルの西ヶ谷寿一氏とエイベックス・ピクチャーズの横山蘭平氏が登場。当初より映画化されることが決定していた本作は、松田翔太が探偵モノに挑戦すること、4人の映画監督が手がけること、コアなファンを持つすぎむらしんいちの同名漫画を原作としていることなどで話題となっているが、この意欲的なプロジェクトはどんなビジョンのもとに始動したのか。(編集部)

横山「テレビドラマで世界観を構築して映画に繋げていく」

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ーー『ディアスポリス 異邦警察』はドラマ開始時より映画化もアナウンスされています。本企画が立ち上がったきっかけを教えてください。

横山:僕は今の会社に入社する前、フラフラしている時期に漫画を読み漁っていて、そのときに原作の『ディアスポリス -異邦警察-』と出逢いました。すぎむらしんいち先生の絵とリチャード・ウー先生という名前がまず強烈で手にとり、その猥雑な内容にすごく惹かれていました。入社後、映画を企画できる部署に入って企画を先輩に相談したところ、西ヶ谷さんを紹介してもらいました。複雑な設定を理解して貰う必要がある一方で劇場向きなエピソードが多い作品なので、ドラマだけでも映画だけでも描ききれないと思い、企画当初からテレビドラマで世界観を構築して映画に繋げていくという事を考えていました。

ーー最近は映画化を前提としたドラマも増えていますが、その中で『ディアスポリス』のようなコアな作品をテレビで放送することには驚きました。

西ヶ谷:映画とドラマを合わせて展開するというアイデアはもともとありましたが、それがどこでやってもらえるかは横山さんが必死に動いて、後で決まりました。MBSの深夜枠では以前に、『闇金ウシジマくん』を放送していたこともあって、攻めた企画も親和性があるのでは、と期待しつつ。。

ーーテレビドラマと映画を並行して制作する場合、制作費はどうしているのですか?

西ヶ谷:『ディアスポリス』はその空気というか世界観が大事だから、それを実現するためにどう制作費を割り当てるかは工夫しました。深夜枠のドラマの予算内で「ディアスポリス」をやるとなると、どうしてもルックが残念な感じになってしまうと思ったのですが、後ろに映画があることで、映画作品として用意すべき美術、ロケセット、衣装とかのベースを前倒しで用意したり、外国人エキストラや言語指導へは包括的交渉をしたりして、とにかく、ドラマの1話目を観た時点で視聴者にインパクトのある映像を提供できるようにしたかったです。ただ撮影日数はあくまで深夜ドラマの範囲内だったので現場はかなりきつかったと思いますが。

ーーということは、MBSテレビが映画にも出資しているわけですか?

横山:映画とテレビ、どちらも同じ座組みになっています。制作委員会も一緒です。

西ヶ谷:スタッフも一緒なので、こちらの采配で予算を振り分けられるんです。これは、テレビと映画を並行して作る大きなメリットですね。

ーーただ、映画とテレビでは放送コードも違うので、表現についても調整が必要なのでは。

西ヶ谷:僕自身は映画の人間で、映倫がレイティングのすべてなのですが、テレビはそうはいかない。映画はお金を払って観るものだから多少そこは許されるところが、テレビは公共のものだからより表現に厳しい。だからその辺は、もう横山さんにお願いして(笑)。

横山:こういった作品を扱っているので脚本開発の段階で一回で通るエピソードはひとつもありませんでした。そもそも原作では他国籍の登場人物を不法滞在者として扱っていたりするので、そのままでは難しくテレビで放送できる形にするのは苦労しました。

ーーテレビドラマのプロデューサーは、どうしても表現に悩むといいますね。

西ヶ谷:以前、リアルサウンドに登場した日本テレビの河野英裕さんは僕の大学時代の先輩なのですが、河野さんほか、テレビドラマの関係者と話す時には、よく「表現」とか「規制」の話になります。(参考:峯田和伸×麻生久美子×岡田惠和、夢の布陣はなぜ実現した? 河野英裕P『奇跡の人』インタビュー)コンプライアンスはこれからより厳しくなるし、表現者として真面目に向き合うとすると、もうテレビを離れるしかないんじゃないか、とか。みんな危機感を持っていますね。そんな中、よくこの企画を通してくれたなと、感謝しています。

ーー西ヶ谷さんは「ディストラクション・ベイビーズ」のプロデューサーもされています。かなり過激な作品ですが、お世辞抜きで最高だと感じました。試写会で怒っている批評家もいて、そういうところも含めて面白いなと。

西ヶ谷:映画をどう観るのか、いろいろな立場があると思いますが、ただつまらないと書かれるより、怒ってもらったほうが良いとは思っています。怒るのはパワー入りますから。前田司郎監督の「ふきげんな過去」も、宣伝担当が上映後にあるライターさんから1時間くらい説教されたようなのですが(笑)、それだけ引っかかる強いものが作品にあったということだと思います。

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