成馬零一の直球ドラマ評論『とと姉ちゃん』四週目
『とと姉ちゃん』慌ただしい展開となった四週目 高畑充希は常子の不安をどう演じた?
祖母の青柳滝子(大地真央)が切り盛りする材木問屋・青柳商店で暮らすことになった小橋家だったが、母の君子(木村多江)が滝子とケンカしたことで小橋家は青柳商店を飛び出し、仕出し屋の森田屋で、住み込みで働くことに。今までとは気性の荒い仕事仲間に囲まれて、はじめは馴染めずにいった常子(高畑充希)たちであったが、お弁当の届け間違いの騒動をきっかけに打ち解ける。一方、常子と鞠子(相楽樹)は青柳商店の番頭・隈井栄太郎(片岡鶴太郎)から学費援助を受けて、無事、高校に編入することに。しかし、前の高校の制服で登校した常子は教室で孤立してしまう。
前回までの上品な雰囲気から、一気に慌ただしくなった『とと姉ちゃん』第四週。秋野陽子が演じる女将の森田まつを筆頭に、森田屋の面々は一癖も二癖もある人たちばかり、連続テレビ小説『あまちゃん』(NHK)で寡黙な寿司屋の大将を演じたピエール瀧は、大将の森田宗吉を演じる。『あまちゃん』とは違い、乱暴な口調で怒鳴り散らし、今までの上品な雰囲気を一気にぶち壊した。
宗吉の妻・照代を演じるのは劇団・大人計画の平岩紙。「在日ファンク」のボーカル&リーダーとしても知られる浜野謙太は、板前の長谷川を演じている。そして、元AKB48の川栄李奈は森田家の一人娘・富江を演じており、宝塚出身の大地真央が女将を務める青柳商店に較べると、生々しい演技をする個性的な面々がそろっている。
そんな森田屋で常子と鞠子は弁当の配達を手伝っていたのだが、ある日、「松」と「竹」のお弁当を常子たちが配り間違えるという事件が起こる。大将は激怒するが、実は、積み込み段階で弁当の上に置かれていた紙を長谷川が落としてしまい、置き間違えたことが原因だとわかる。それでも、森田屋全体の責任ということで常子たちはお客さんの元に謝りに行くのだが、常子は、「松」の弁当を注文したのに、「竹」の弁当を配ってしまった人だけでなく、「竹」の注文をしたのに「松」のお弁当を注文した人に対しても謝りに行く。
大将は「恥の上塗りをするようなことをするな」と激怒するが、「たとえ、こちらが損になるような目に遭っても、間違った筋は通しちゃいけないというか……。長くお店を続けていく上でそういうことが大事なんじゃないかなぁっと、思ったんです」と、常子は答える。その答えを女将のまつが「気に入った」ことで、常子たちは店の人たちと打ち解けることになる。
これは、間違った木材を使った職人を滝子が、“客に嘘をついてはいけない”と叱ったことから学んだのだろう。まつと滝子はいつもいがみ合っているが、根底にある商売人としての心意気は実は同じなのだということがわかるやりとりだ。
また、新しいキャラクターとして、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)で高畑と共演した坂口健太郎が植物学者を目指している帝大生の星野武蔵役で登場。今までのイケメンキャラとは違う学生服に丸メガネをかけた植物オタクという役柄だが、青柳商店の清(大野拓朗)といい、叔父さんの鉄郎(向井理)といい、本作のイケメンは変人ばかりだ。