ストリートの芸術家・バンクシーが人々を熱狂させる理由ーー『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』評

ISHIYA『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』評

 また、バンクシーは自分の作品で儲けるようなことに一切興味が無いらしく、そのストリートアートに目をつける美術商や、作品を盗む人間などもあらわれるが、バンクシーはそれすらも凌駕する方法を自らのアートにより創造する。作品自体の素晴らしさはもとより、行動や作品の意味も含め支持されていくのは、真実のアーティストの姿といえよう。

 5ドルでバンクシーの絵の見物料を取るブルックリンの黒人。自分の働く自動車工場のある場所につくられたスフィンクス像を持ち去る自動車修理。ゲットーと描かれ、怒りを露にするブロンクスの黒人。ストリートアートだからこそ描きうるその視点は、持たざる人間側からの世の中に対する抵抗だ。

 社会の矛盾や、それに対する人々の怒りをこれほどまでに的確に、そして心に届くように表現する芸術家バンクシー。最高にイカしたアーティストと同時代に生きれたことを幸せに思う。

■ISHIYA
アンダーグラウンドシーンやカウンターカルチャーに精通し、バンド活動歴30年の経験を活かした執筆を寄稿。1987年よりBANDのツアーで日本国内を廻り続け、2004年以降はツアーの拠点を海外に移行し、アメリカ、オーストラリアツアーを行っている。今後は東南アジア、ヨーロッパでもツアー予定。音楽の他に映画、不動産も手がけるフリーライター。
FORWARD VOCALIST ex.DEATH SIDE VOCALIST

■公開情報
『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』
3月26日(土)渋谷シネクイント、4月2日(土)渋谷アップリンクほか全国順次公開
監督:クリス・モーカーベル
(2014年/アメリカ/81分/カラー/16:9/DCP)
提供:パルコ
配給:アップリンク、パルコ
宣伝:ビーズインターナショナル
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/banksydoesny/
公式Twitter:https://twitter.com/banksydoesny_JP
公式Facebook:https://www.facebook.com/banksydoesny.jp

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる