フジテレビ×Netflix『アンダーウェア』は受け入れられるか? 脚本家・安達奈緒子の作家性から検証

『アンダーウェア』脚本家・安達奈緒子の才気

20151126-underwear01.jpg
(C)フジテレビ

 いつの時代でも、一世を風靡する作家は自分の信念に忠実で、物語上のサービスをすることはあっても、決して自分の心情には嘘をつかないものだ。本音を言うと、こういう人だけを作家と呼びたいと思っているのだが、安達の厳しさは、気軽にドラマを見たいと思っている多くの視聴者にとっては中々、受け入れがたいものなのだろう。特に今の民放地上波のドラマには作り手にも視聴者にも心理的な余裕がないため、不快な場面になるとすぐに拒絶してしまう。受け手を信用して、物語の深度をどんどん高めていく安達のシナリオは中々受け入れてもらえない。

 しかし、まだ黎明期にあるNetflixにおいては、安達の作家性はむしろ歓迎されるものとなるのかもしれない。まだ少数だが、ここには安達のドラマを受け入れてくれる視聴者がいるという確信のもとに本作は作られている。ドラマはチーム制作なので、必ずしも安達だけの作品とは言えないが、少数のお客さんを相手にしたオーダーメイドで作品の質にこだわり続ける「emotion」に、『アンダーウェア』という作品の在り方が投影されていることは間違いないだろう。

 だからこそ、物語中盤からの南条社長の部下が造反して新会社を設立する展開はスリリングである。大規模なマーケティング戦略のもとで南条社長のアイデアを盗んで大量生産の高級下着を売り出すという展開は、『アンダーウェア』を間に挟んだフジテレビ(民放地上波)とNetflix(有料ネット配信)の危うい綱引きが反映されているかのようだ。

 作り手の現状が物語に反映されている作品には、商品としての完成度を超えた気迫と緊張感が宿る。Netflix発の『アンダーウェア』は、まさにそういうドラマである。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■作品情報
Netflix Original ドラマ『アンダーウェア』
Netflixにて独占プレミアストリーミング中
公式サイト:http://www.netflix.com/

■放送情報
金曜プレミアム『アンダーウェア』
第3週:11月27日(金)21:00~22:52
第4週:12月4日(金)21:00~23:22 ※30分拡大
公式サイト:http://www.fujitv.co.jp/underwear/
(C)フジテレビ

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる