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「時間」を取り扱う恋愛映画の課題とは? 『アデライン、100年目の恋』のSF性とファンタジー

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 概ねフォーカスが当てられるのはタイトルロールにもなっているアデラインであるが、この物語でより深く描かれるべきは、アデラインの娘フレミングである。自分自身が年老いていく傍で、母親が自分よりも若く美しくい続け、それを見守り続けるというあまりにも残酷な運命を辿る、紛れもなくこの映画のもう一人の主人公であるのだ。彼女の存在を無視することなく、映画のひとつの核として、決して大きな比重ではなかったにしろ、描いたことはこの映画の最大の魅力だ。

 現代パートでこの役を演じるのは『アリスの恋』でオスカーに輝き、『エクソシスト』の母親役など、言わずと知れた名女優エレン・バーステイン。さらに、彼女の若き日を演じるのはケイト・リチャードソンというまだ無名の女優で、どうやらこれが映画初出演だというのだから、この難役を演じきったことは高く評価できよう。

 エレン・バーステインの底知れぬ演技力は、年老いてもなお衰えることを知らず、出る映画出る映画で大御所としての風格と、まだ若き日の彼女を思い出させるような儚げな微笑みを見せてくれるのである。思い返してみれば、昨年の『インターステラー』でもマシュー・マコノヒーの娘を演じ、親よりも年上の娘という珍しい役柄を2作続けて演じたことになる。

 ただ妙に気になって仕方ないことが、事故で一時的に心臓が止まったり、雷に打たれたことで何らかの奇跡が生じて主人公の老いはストップすることになるという説明が、なんだか気恥ずかしいほどに説明臭く感じてしまうことだ。純粋にファンタジーとして機能させることをせず、ややサイエンス・フィクション寄りにしてしまったことで、かえって青臭く見えてしまうのである。劇中のセリフにあるような、「政府に見つかったら……」のようなくだりが、真っ直ぐにファンタジーとしての悲恋ものを描くことを拒絶してしまっていることは、魅力を半減させてしまうのではないだろうか。

 もっとも、「時間」を取り扱う恋愛映画はどちらに傾けるかが大きな課題となっている実績があって、たとえば近年ではSFに傾けた『バタフライ・エフェクト』は大きな成功を産んだが、対照的にファンタジーを重視した『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』はそれ以上の成功を果たした。SF性を重視すべきだったにもかかわらずファンタジーになってしまった『きみがぼくを見つけた日』のような例を考えると、非常に難しい選択であったようにも思える。

 映画はあらゆる選択の果てに生まれる芸術である以上、正誤の判断が入り混じり、それぞれが補完し合わなければならない。その点では、シネマスコープの画面やデジタルと16㎜フィルムの併用、カラーバランスなど、外見のパッケージとしての選択はすべて効果的に働いた。これがまだ4作目の長編であることを考えれば、リー・トランド・クリーガーの課題はパッケージとディテールの中間の層をより高密度に仕上げていくことであろう。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『アデライン、100年目の恋』
10月17日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督:リー・トランド・クリーガー
出演:ブレイク・ライヴリー、ミキール・ハースマン、ハリソン・フォード、エレン・バースティンほか
2015/アメリカ/カラー/113min/原題:The Age Of Adaline
(c)2015 LAKESHORE ENTERTAINMENT GROUP LLC, KIMMEL DISTRIBUTION, LLC AND LIONS GATE FILMS INC. All Rights Reserved
公式サイト:www.adaline100.jp

      

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