スケールアップした“ガールズ・ムービー”続編 『ピッチ・パーフェクト2』の見どころは?

『ピッチ・パーフェクト2』の魅力分析

 TOHOシネマズ六本木ヒルズでの先行上映を経て、10月16日(金)より『ピッチ・パーフェクト2』の全国上映がスタートした。本国アメリカでは、同日に公開された『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を抑えて初週興行成績のトップを獲得。ミュージカル映画としては、『レ・ミゼラブル』(2012年)、『マンマ・ミーア!』(2008年)を超えて、歴代1位の好成績を収めるなど、爆発的なヒットを記録した本作。『2』とついていることからも分かるように、そのヒットの背景には、観客たちから予想を超える大きな支持を獲得した前作『ピッチ・パーフェクト』(2012年/日本では今年5月に公開された)の存在があるのだが……『2』の話をする前に、まずは前作の内容を振り返っておくことにしよう。

 物語の舞台となるのは、アメリカのとある大学。DJを目指す音楽好きの女子大生ベッカ(アナ・ケンドリック)は、入学早々なぜかアカペラ部に入部してしまう。伝統ある女子アカペラ部「バーデン・ベラーズ」。かつては、そこに入部を許可されること自体が、淑女としてのステイタスだったにもかかわらず、現在は時代遅れの「ダサいもの」として、学生たちの失笑を買うような状態になっている。しかも、現在入部してくるのは、個性の強すぎる、変わった女生徒ばかり。しかし、アカペラの魅力に開眼したベッカを中心に、お互いの個性を認め合うようになった「ベラーズ」は、やがて一致団結。個性豊かなハーモニーと派手やかなステージを武器に、全国大会で快進撃を果たすのだった。

 『ハイスクール・ミュージカル』や『glee/グリー』……「学園もの」に「音楽」の要素を加えたテレビ・ドラマの人気を受けて、当初は低予算の小規模な映画として企画された『ピッチ・パーフェクト』。しかし、往年のポップソングのアカペラ・アレンジの秀逸さはもとより、「さまざま個性が一体となって生み出されるハーモニーの美しさ」という、テーマと直結した表現の分かりやすさ、そして『がんばれ!ベア―ズ』(1976年)以来、もはやアメリカ映画の王道ネタとなっている「落ちこぼれたちの会心の一撃」を描いた物語が、観客の熱烈な支持を獲得。劇中に登場する「CUPS(カップス)」と呼ばれる演奏スタイル(カップを鳴らす音と手拍子だけで歌うスタイル)が世界中で大ブームを巻き起こしたことも相まって、晴れて続編の製作が決定。それがこの『ピッチ・パーフェクト2』という次第なのである。

 主演のアナ・ケンドリックをはじめ、“ファット・エイミー”役のレベル・ウィルソン、ブリタニー・スノウ、アンナ・キャンプなど、「バーデン・ベラーズ」のメンバーが勢ぞろいした本作。そこで描かれるのは、前作から3年後の世界だ。前作で見事全米チャンピオンとなった「バーデン・ベラーズ」は、オバマ大統領の誕生日を祝う祭典で、とっておきのパフォーマンスを披露する。しかし、そのパフォーマンスの最中に、思わぬ大失態を演じてしまった彼女たちは、以降国内で行われるアカペラ大会への出場禁止を言い渡され、さらには全米チャンピオンとして臨むはずだった全国ツアーも取り消されてしまう。彼女たちの代わりにツアーを行ったのは、欧州チャンピオンであるドイツ代表「ダス・サウンド・マシーン(DSM)」。テクノを取り入れた先鋭的なパフォーマンスを披露するライバルの出現に動揺しつつも、ベッカを中心に再び一致団結した「ベラーズ」は、処分の範囲外である世界大会に照準を絞り、新たにトレーニングを開始するのだが……。

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