『龍三と七人の子分たち』インタビュー
藤竜也が明かす、独自の演技論「まずは自分をだますことが、心の支えになる」
「『この人たち、バカじゃないの?』って、笑って観てもらえたらうれしいですね」
――とはいえ、実際に映画を観ると、なかなかのコメディリリーフぶりで……。
藤:そう見えましたか(笑)。じゃあ良かったですね。僕自身は、コメディをやっているつもりもなかったんだけど……そのへんは、北野監督のおかげでしょう。得をしました。
――コミカルなだけではなく「龍三が可愛い」という女性の声も多かったようですが。
藤:そこで言っている「可愛い」っていうのは、今の世の中においてキーワードになっているような「可愛い」でしょ? 「あれ、可愛くない?」とか、よく若い女性が言っているじゃないですか。不思議なトーンでさ(笑)。まあ、英語で言うところの「キュート」ってことなんだろうけど、“ジジイ”の何がキュートなんだろうね。普通“ジジイ”なんてものは、何かしらうるさいことを言って、煙たがれるような存在なのに。それを「可愛い」って言われも、こっちとしては「ウソだろ?」ってぐらいなもので。まあ、悪い気はしないですけどね。嫌われるよりは、よっぽどいいです。
――ただ、この映画は、そういったコメディ的な可愛らしい要素がありつつも、それだけではないというか……どこか哀愁のようなものも、ちょっと感じられますよね?
藤:そうかもしれないですね。一回目観たときは感じなかったけど、二回目観たらそういう哀愁とかペーソスみたいなものを、ちょっと感じましたね。まあ、それを出そうとしてやったわけではないんですけど。
――はい。そこはかとなくにじみ出る哀愁というか。
藤:そうですね。映画の作り方として、そういうものを売りにするのは、ものすごい簡単なんですよ。それを強調すればいいだけの話だから。でも、北野さんは、絶対そういうことはしないですよね。そういう叙情性を排しながらも、なおにじみ出るものというか……だって、生きていること自体が悲哀に満ちているわけじゃないですか。歳をとってくれば、ますますそういう哀愁の色は濃くなってくるわけで。だからこそ、それをやっちゃおしまいよっていう北野さんの表現者としての自負が、やはりそこにはあったように思います。にもかかわらず出てしまうものというかね。
――わかります。
藤:だから、ちょうど良かったんじゃないですかね。やっぱり、何かを押しつけられるのは嫌だものね。自分で勝手に感じるのはいいけど、それを押しつけられたら、やっぱりつまんないじゃないですか。
――そうですね。では最後、改めて『龍三と七人の子分たち』の見どころを。
藤:まあ、とりあえず、笑って観ていただければ、うれしいですね。特に意気込むことなくダラーっと観て、「この人たち、バカじゃないの?」って笑ってもらえたら、僕は本望ですね。もちろん、そのあとに、いろんなことを、それぞれ感じてもらえたらうれしいですけど、それはもうみなさんにお任せします。
(取材・文=麦倉正樹)
■作品情報
『龍三と七人の子分たち』
10月9日(金)よりDVD&Blu-rayリリース
「特装限定版」 ※2枚組
Blu-rayスペシャルエディション(BD+DVD)¥7,000(税別)
DVDスペシャルエディション(DVD+DVD)¥6,000(税別)
<特典ディスク(DVD)>
★総尺150分超えの豪華特典ディスク付き!
メイキング「北野流 ジジイ映画の作り方」(ナレーション:下條アトム)(76分)
キャストインタビュー(一龍会 その壱/一龍会 その弐/京浜連合&ママ)(33分)
完成披露試写会舞台挨拶(11分)初日舞台挨拶(21分)島田洋七さん スペシャルトーク(15分)
ミニ特番「俺たちに明日なんかいらない ジジイが最高スペシャル!!」(2分)海外版予告編(1分) /総尺159分
「通常版」
Blu-ray¥4,800(税別)BCXJ-1029
DVD ¥3,800(税別)BCBJ-4714
<特典内容>
【映像特典】
★特報 ★予告 ★TVスポット ★特別映像「ジジイ映画の楽しみ方」
発売・販売元:バンダイビジュアル
(C)2015 『龍三と七人の子分たち』 製作委員会