サバンナ・八木真澄が現場を凍り付かせてしまった一言とは? 失敗から学んだ「コミュ力」の極意

サバンナ・八木、失敗から学んだコミュ力
サバンナ・八木真澄『ウケる現場のつくり方』(KADOKAWA)

 ファイナンシャルプランナー1級取得で話題となったサバンナ・八木真澄の新著『ウケる現場のつくり方』(BSよしもと『営業-1グランプリ』発/KADOKAWA刊)が、7月1日(水)に発売される。

 本著は、2023年よりBSよしもとで絶賛放送中の『営業-1グランプリ』にて、八木が毎回発表している「営業マニュアル」をもとに、ビジネスシーンや日常で使える処世術をレクチャーするコミュニケーション実用書。今回は書籍化への熱い思いはもちろん、成功するために経験してきた失敗の数々、ポジティブに考えるマインドへの変化、努力の仕方など、さまざまに語ってもらった。

金持ちの芸人のネタは笑いづらい

――本著はこれまで八木さんが営業で培ってきたテクニックや知識が詰め込まれた1冊です。執筆にあたって意識したのは、どんな点ですか。

八木:ここに書かれた内容は、営業に行く芸人に向けて説明していたマニュアルばかりなんです。ですが、SNSなどでの「サラリーマンでも使えることがある」というコメントを見て、そうなのかと。僕はサラリーマンを経験したことがないので、吉本の営業部の方に『営業-1グランプリ』製作委員会として監修に入ってもらい、サラリーマン的な目線を意識した内容にしました。

 『営業-1グランプリ』放送前は毎回、(番組内で発表する)「営業マニュアル」を作るために社員さんと打ち合わせするんですが、僕が普段当たり前やと思ってやっていることにも目を向けて、いろんな発見をくれるんです。そういったことを網羅した1冊になっています。

――当たり前だと思っていることで、社員さんからすごいと思われたこととは? 具体的に教えてください。

八木:飛行機での移動で2時間に1本くらいしか便がなく、1便でも乗り遅れるとトチってしまう時って、アテンドする営業先の人はヒヤヒヤしているらしいんです。が、僕は帽子も何も被らないので、「すぐに見つけられるから、ありがたいです」と言われたのは気づきでした。

 芸人ってプライベートやと本人かどうかわからんっていう場合が多いんですよ。僕も日本テレビでお昼の生放送番組に出ている時、メガネを外した南海キャンディーズの山里(亮太)にノーモーションで挨拶されて、誰かわからんかったことがありました。鉄拳なんて、北海道の現場で隣におっても全然わからなかったですしね(笑)。

 やから、ロビーに出た瞬間に顔を見せるとか、自ら挨拶するとかを大事にしたほうがいいなと。これは一般社会でも通ずることやなと思いました。

――全編通して、大きく言えばコミュニケーションにまつわる項目が多いのも印象的でした。

八木:「集合場所ではイヤホンを外す」もそうですよね。「マネージャーは芸人の教育係 芸人はマネージャーの教育係」での「必要なことは遠慮せずに伝える」は、営業-1グランプリの委員会の方が言っていることなんです。僕で言うと、かつてはスポンサーというものを認識しておらず、若手の頃、バラエティ番組に出た時にスポンサーの飲料系メーカーさんの飲み物があまり得意じゃないという発言をして、現場を凍り付かせてしまったことがあったんです。もちろん台本にはスポンサーの名前も載っているんですよ? けど、当時の僕は面白いことさえ言えばいいんでしょというスタンスで、まったく調べてなかったんです。

 僕の認識が甘かったのは事実ですが、経験豊かなマネージャーさんが芸人に「スポンサーさんがここに書いてあります。NGをちゃんと理解してください」と言ってくれると、そういうミスは少なくできるじゃないですか。

 そんな感じで、芸人の仕事をより盛り上げるために、社員さんがより丁寧に接してくれるとありがたいことってたくさんあるんです。今、ハラスメントを気にしすぎるあまり、指摘するのが難しいかもしれませんが、信頼関係のある者同士ならば、お互いがよくないと思うことを指摘し合えば、さらによくなることのほうが多いと思います。

――読者に伝えたい一番の項目は?

八木:「SNSで最高月収を発表しない。金持ちの芸人のネタは笑いづらい」ですね。これ、一般社会でもあると思うんですよ。30歳くらいになって同窓会に行くと、「お前の会社はどうやねん。「お前の仕事ってどうなん」っていう話になるじゃないですか。お酒を飲んで気が大きくなって話してしまった最高年収が周りより多かった場合、酔うてても相手は「え?」って一瞬冷めるし、1週間経っても“あいつ、あんなに儲けてんのか”って考えてしまう。不快感、劣等感を与えないためにも絶対に言わないほうがいいと思います。

ピンチとチャンスって表裏一体

――「朝9時集合、早いと言わない。世間では遅いほう~」という項目もそうですが、八木さんはネガティブなことをポジティブに捉えるのが上手だと感じます。気をつけていることはありますか?

八木:今って普通に生きているとストレスが溜まる世界やと思うんですが、前提として“足るを知る”ということですね。

――“足るを知る”とは、今自分が持っているものが不足してない、十分だと受け止めて、それ以上を求めないという考えですが、そう思えない人は芸人さんに限らず、一般の方でも多いのではと思います。

八木:コップに水が半分入っている時に、「まだ半分ある」と思うのか、「もう半分しかない」と思うのかの違いですよね。これを前者にするには、ちょっとした工夫がいるんです。例えば八王子に住んでいて、毎日、都心まで時間をかけて通勤しているとします。ギリギリに動くと単なる移動になりますが、20分だけ隙間時間を作れば、ちょっとした楽しみが増える。その時間を使ってこれを買おうとかここに行こうとか。お金も無駄遣いするのではなく、自由にしていいお金を1000円余分に持っておくようにすると、今日はこのお金を使って何かしようという楽しみができる。そうやって、考え方を変換させることは大切です。

――昔からそんな考え方をできていたんですか?

八木:いえ、全然。こう考えられるようになったのは30代の時、自己啓発本を片っ端から読んだからです。本屋にある本を全て買って……そうすると、すべての本に同じようなことが書いてあるんですよ。パターンはそんなにないんやなっていうことに気づいて、書いてある内容を踏まえて、今のような考え方をするマインドに変えました。

――では、20代の頃は行き詰まりのようなことを感じていたと。

八木:感じていましたね。19歳から芸人を始めて、いい感じですぐテレビの仕事が来たんです。けど、24歳の時、それまで活動していた心斎橋筋二丁目劇場が閉館になって、その後、新しい劇場ができるという話もなかったんです。その時代は『M-1グランプリ』や『キングオブコント』のような賞レースもないので、活動する場がなくなってしまって……実質クビですよね。

 その時、僕は『ぴあ』(注:当時、エンタメ情報が網羅されていた週刊誌)を買ってきて、ハコ(劇場)を見つけて借りて、10万円を用意してチケットぴあで売られたチケットを全券買って、自分で手売りして、ネタを披露する場所を作りました。大学の頃の友人は結構稼いでいるのに、自分には仕事がない。こんなに差が出てしまったのかと焦ってましたけど、現実を受け止めたら終わりだと思ったので、わざと明るい服を着たり、そうやって自分から出演する場所を作ったりして、前向きに行動するようにしたんです。

 46歳でレギュラー番組が終わった時は、“完全に詰んだ”と思いました。けど、これだけ暇やったら勉強できるなと思い直して、ファイナンシャルプランナーの勉強を始めて1級の資格を取ることができて、それが仕事につながったんです。ピンチとチャンスってほんまにそう。表裏一体なんですよね。

やりたいことがあるなら、その状況から絶対に逃げない

――どうしたら、そのような考え方に変化させることができますか?

八木:やりたいことがあるなら、その状況から絶対に逃げないことです。失敗は必ずするものですし、失敗がわかるって実はチャンスなんですよ。対処できれば、成功に近づきますからね。あと、僕の場合は夜やらない。例えば仕事でうまく行かなかった時、夜に酒を飲んでくっそーと悪口を言わず、朝起きて反省点を活かした行動をする。特に“やばいな、ピンチやな”と思っている時はそうしています。

――八木さんはファイナンシャルプランナー1級合格と、最近は成功したところにスポットが当たりがちですが、たくさんの失敗を重ねて掴んだ成功なんですね。

八木:成功してると“見えている”だけの話で、失敗にスポットが当たってないだけ。種を蒔いて、芽が出て、水をやって、木になって実をつける……最後の実をつけた部分にしか注目されないんですが、家族でやってた「八木家ファミリーチャンネル」っていうYouTubeチャンネルは失敗しましたし、所属していた吉本坂46も冬眠中、資格試験もいくつか落ちてます。実は、山ほど失敗してるんです。

 じゃあ、種を蒔いて実を付けるまでの、どこからが努力だと思いますか? これは「水をやる」以降なんです。資格取得のために勉強するのは「水をやる」行為で努力が必要ですが、どの資格を取るか見つけるのは「種を蒔く」。つまりアンテナを広く張ることで、努力は必要ないんですね。いろんなところにアンテナを張って、芽が出てきたら努力すればいい。だから、自分に合うことを見つけたいという人は、アンテナを広く張っておくことをおすすめします。

――失敗を恐れず、行動あるのみなんですね。

八木:間接的かもしれませんが、この本にもマインドを変える方法がたくさん書いてあるので、みなさんの役に立てたら嬉しいです。この本は『営業-1グランプリ』の公式版と思ってもらって構いません。監修で関わっている営業-1グランプリ製作委員会の方々は吉本の社員さんです。リアルなサラリーマンの視点が入った本ですから、ビジネスマンのみなさんにも通ずるものがあると思うので、ぜひ読んでもらいたいですね。7月にはBSよしもとにて『営業-1グランプリ2026 上半期スペシャル』も放送されるので、そちらも観てもらえたら嬉しいです!

■書誌情報
『ウケる現場のつくり方 どんなアウェイもホームに変えるサバンナ八木流「コミュ力」の教科書』
著者:サバンナ 八木 真澄、営業-1グランプリ製作委員会
価格:1,980円
発売日:2026年7月1日
出版社:KADOKAWA

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