突然リーダーになったらどうする?「赤裸々体験談が沁みる」話題書の著者に聞く、心が軽くなるリーダー論

■現代のリーダー、何が正解?

深谷氏はリーダーにとってコミュニケーションスキルはとても重要だと話す

――現在の若いビジネスパーソンは、面倒くさい仕事が増えるからと、リーダーになることを最初から拒否する人もいるようです。深谷さんの周りに、リーダーになることを躊躇する方がいた場合、どのようにお声がけされますか。

深谷:人から「やってみて」と言われたことは、一回やってみたらいいと思うんです。自分は何者で、何ができるのか……と自分探しをしている人がいますが、自分で自分を探していても何も見つからないんですよ。あなたはこれができそうだと思われて任されるのだから、まず実践してみてはいかがでしょう。自分一人では気づかなかった自分に気づく大きなチャンスだと思うのです。

――やってみてダメだと思ったら、やめればいいわけですからね。

深谷:おっしゃる通りで、やってみて嫌だったらやめればいいと思うのです。登山をしない人は、登山家はなぜあんなに苦しい思いをして登るのかと思うでしょう。でも、登ったからこそ見える景色やかけがえのない体験が得られます。最初から自分はできない、向いていないと決めつけて、やらずにいるのはもったいないと思います。あとになってから、あのときやっておけばよかった……と後悔するのがもっとも辛いことですから。

――本書を読んで深谷さんが一番大切にされているのは、一緒に働くスタッフへのコミュニケーションや言葉のかけ方だと思います。特に、具体的な行動や指針を示しながら言葉をかけるのが大事だと説いています。

深谷:言葉は本当に大事です。具体的な例を示してあげないと部下はやることのイメージができないので何をして良いのかわからない。相手の立場になって、しっかりと業務がイメージできるくらい、具体的な言葉で伝えることを心がけてほしいです。

■部下に仕事を任せるテクニック

――リーダーという立場になってもプレイヤー意識が抜けず、なんでも自分でやろうとする人がいます。部下に仕事を任せられるようになるには、どうすればいいのでしょう。

深谷:自分がやった方が早い、渡したくないという感覚がある人は多いですよね。私も同様で何でもやりたがるタイプなのですが、中国に行ったときに視点を変えました。その人のために何ができるのか、チームのために何が最適なのかと考え、仕事量と納期を具体的に確認するようにしたら、部下に任せられるようになっていきました。

――「仕事を抱え込むのでなく部下を信頼して渡す」テクニックを本書では解説されています。

深谷:自分一人で抱えきれない仕事ならば、部下に業務を割り振り、分担するべきです。ただ、任せたいけれど、何からお願いするべきなのか、わからない人もいますよね。そんな時は、仕事の割り振りを自分一人ではなく、部下と一緒に検討してはどうでしょう。相手に任せられないときは、頭の中に漠然と仕事の全体像があり、何をすべきか言語化できていないことがある。細かい作業まで分解できれば、自分も部下も仕事の解像度が上がるので、やるべきことが明確になりスムーズに仕事が回り始めることになります。

――部下に仕事をお願いする場合、日頃からのコミュニケーションが大事だと思います。コミュニケーション以外にも、深谷さんが大事にされていることはありますか。

深谷:部下のことを十分に理解する、観察することでしょうか。部下に興味を持つことですね。コミュニケーションも、私はリーダーが一方的に話すよりも部下の話を聞くことが大事だと思います。こういう悩みを持っているんだな、こういう言葉を使うんだな、こういうことをしたいんだなという話は、対話を重ねていくなかでわかっていくのです。部下に対する観察と質問がリーダーには必須だと思いますね。

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