「リブレ」「大洋図書」が牽引する「BL」事情、次なる覇者は? 識者が解説する人気出版社の業界地図

「商業BL」識者に聞く業界マッピング

◼️海外BLにはレーベルなし! プラットフォームにファンがつく

 ちるちる編集部は、「BLレーベルを重視するファン心理は日本特有のもの」と指摘する。BL人気が高い韓国では、スマホで縦にスクロールしながら読む「Webtoon(ウェブトゥーン)」が主流で、レジンコミックス、KAKAO WEBTOON Studio、NAVER Webtoonの3強。それらのプラットフォーム単位でファンが着いているという。

 レジンコミックスは成人向けに特化しており、基本的にほとんどの作品に性描写が含まれる。ちるちる編集部は「課金がデフォルトで18歳未満は見れないため、多様なスタイルのBL作品が多く、韓国のBLファンのスタンダードになっている」と解説する。

 対してKAKAOやNAVERの作品は、アプリで配信されることを前提としているため、性描写はほとんどない。さらに基本的には『待てば無料』スタイルであるため、ライトな読者を獲得しているそうだ。

 中国は「快看(クワイカン)」、「ビリビリ漫画」が人気。とはいえ、政治的にBLや性描写は規制されているため、ブロマンス風味の作品がスタンダードだ。ちるちる編集部によると、中国では男性同士の恋愛に重きを置くというよりは、ストーリーや展開で引きを作るのが主流。ファンタジーものも多く、一般作品にBLの要素を追加したようなテイストだという。

 独自の発展を遂げた韓国・中国だが、人気のジャンル傾向は似ているようだ。「高身長でイケメン、高スペックだが、性格が悪くてクズなイケメン攻めが人気。社会的身分が高い攻めが、受けに対して辛く当たるようなシチュエーションが王道です。10年前くらいの日本BLでスタンダードだった『俺様』っぽい感じ」としながらも、「韓国の人気作では『受けにこんな酷い仕打ちをして許されるんだ……?』と感じるようなものもあります(笑)」とも答える。

◼️海外からみた日本BLとは? 人気作の共通点は「絵柄」

ⓒSANDIAS

 現状では、海外では紙媒体の漫画を読む習慣があまりなく、日本のBL漫画を翻訳したものも多くは流通していない。各国でBLコンテンツが作られ、それぞれ人気も高まってきた。しかしながら、日本BLの歴史も長いので、根強い海外ファンもいることは間違いない。

 「海外で人気が出るうえで大事なポイントは"絵柄"。いかに綺麗な絵柄かが重要」としたうえで、「『君の夜に触れる』(シュークリーム)の、もりもより先生の繊細なタッチや、『不屈のゾノ』(KADOKAWA)のしっけ先生の可愛らしい画風が人気」と話す。

 

『不屈のゾノ』(KADOKAWA)

 その他にもアニメ化された『黄昏アウトフォーカス』(講談社)、『ギヴン』(新書館)などは欧米でも人気が高いらしいが、そもそも日本BLはかなり人気や話題がないと原作が翻訳されないため、海外BLファンが触れる機会が少ないという。

 とはいえ、小説『美しい彼』は映像化をきっかけに海外SNSでも話題となり、原作小説が翻訳され各国で発刊された。日本BL界がさらに盛り上がれば、海外ファンにも日本BLの魅力を発信し続けられるだろう。

儘ならない彼 美しい彼4 (徳間書店)

 

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