【漫画】にんじんにトラウマがある養護施設の少女ーーノンフィクション漫画『それでも、親を愛する子供たち』に胸が詰まる
――Xに投稿した手応えや反響はいかがですか?
うえのともや(以下、うえの):単行本1巻の発売からまずは漫画を知ってもらえればと、第1話から順にポストしていました。タイミングよく多くの人に見てもらえて、反響も多く嬉しかったです。真剣に読んでくれている人がたくさんいると実感できたのも大きかったですね。
――原作・押川剛さんとは『「子供を殺してください」という親たち』でも共作されていますが、それと本作はどのように差別化しているのでしょう?
鈴木マサカズ(以下、鈴木):特に差別化は考えていません。それよりも「繋がっている」という意識ですね。タイトルに関しても「繋がった」いい名前だと思ってます。
――原作、作画、構成でどのようなコミュニケーションをとられているのでしょう?
鈴木:僕の基本的な仕事はネーム。あとは細かいディテールを含めた資料集め、スケジュールの管理、作品全体のトータルバランスも見ています。
うえの:僕は作画担当としてズレが生じないよう、鈴木先生と相談しつつ作画を進めています。原作からネームとなり、最終的に一番いい形で作画を完成させられるように常に心がけています。
鈴木:押川さんからも資料を山ほどいただいてますよ。
――本作の取材は具体的にはどのような内容なのでしょうか。
鈴木:押川さんが役員を務めている児童養護施設で密な取材をしました。実際に足を運ばないと理解できない現実が山ほどあります。子どもたちが児童養護施設に来る理由には、自分の想像を超えた様々な理由があることに改めて驚かされますね。
うえの:僕も児童養護施設への取材訪問に同行しました。子供部屋や食堂などに暮らしている子供たちの日常が感じられ、作画をするうえでは欠かせない機会でした。
――この物語が描く問題とは一体何で、どう解決していけばよいと思いますか。
鈴木:なかなか難しい質問です。僕に関しては、まず自分の子どもと真摯に向き合うことは意識していますね。あとは本作に出てくるお子さんや、ご家庭は決して遠い世界の話ではないこと、紙一重であること。まずはそういった思いやりや想像力を持つことが大事なのではないでしょうか。それだけで凄惨な事件の印象も少し変わるかもしれません。
うえの:様々な子供たちが施設で暮らさざるを得ない経緯には、やはり家庭環境や周りの大人が原因となることが多いです。そんな大人のひとりに自分がなっていないか、常にその可能性を感じながら人と接していけたらと思っています。
――単行本1巻も発売となりましたが、こちらの反響はいかがですか。
うえの:単行本発売から各所で漫画に対する様々なコメントをいただきました。どれも重く真摯なものが多いですね。そして作中の子供たちと似た境遇であるという方々からのコメントも少なくないので、より責任を感じて今後も連載を続けていきたいです。
――今後本作をどう描いていきたいですか?
うえの:普段目にすることのない、各家庭内での問題や事件などの現状をできる限りリアルに生々しく表現したいです。漫画を通して見ることで、それぞれ何か感じるものがあるのではないかと思うので。
――シリアスな物語を描いた後に心を落ち着けたり、リフレッシュする時にすることは何ですか?
鈴木:日々起こる事件やニュース、SNSの炎上案件などについて考えることですかね。常にあれこれ考えているのは職業病かもしれませんが、ある意味では自分のなりの考えを整理することで心を落ち着かせてフレッシュしているとも言えます。常にああだこうだと考えていますよ。