ポスト進撃の巨人? 命を管理されて生きる“小さな人間”の物語 ヤンジャン新連載『ハヴィラ戦記』の衝撃
どこまでも“関係性”にこだわる作家性
ネタバレになるため詳細は伏せておくが、『ハヴィラ戦記』の序盤の展開はまさに激動。物語の立ち上がりとしては、『進撃の巨人』に近いと言ってもいいかもしれない。しかし忍野とマイの関係性に焦点が当たることで、作品にオリジナリティが宿っており、先を予想できない展開となっている。
おそらくここには、作者・みのすけの作家性が大きく関わっている。過去に発表した読み切りでも、キャラクター同士の関係性や生々しい心情描写に強いこだわりを見せていたからだ。
たとえば週刊ヤングジャンプ増刊『ヤングジャンプ ダイイチワ』に掲載された『片隅のエデン』は、獣の姿をした人間、“獣人”をめぐる物語。原獣民の母と自然のなかで暮らしていた犬の少女が、英国から開拓に来た獣人に連れ去られ、過酷な生活を強いられる……という設定だった。
同じ獣人でも、自然のなかで暮らす原獣民と文明が進んだ街で暮らす者が分かれていて、あちこちで植民地支配による不幸が起きているという世界観。現実の人類史と重なるように、獣人たちの世界が作り上げられている。しかし同作においても、物語の軸となるのは世界規模の大きな出来事ではなく、繊細に描き出される主人公の心情だ。そして主人公と原獣民の男性との関係性によって、ダイナミックにストーリーが動いていく。
ちなみに同作は『ヤングジャンプ ダイイチワ』の読者アンケートにて、「ストーリーの面白さ」部門と「物語の世界観の魅力」部門の2つで第1位を取っていた。
そのほか「週刊ヤングジャンプ月例新人漫画賞」シンマン賞94回佳作+月間ベストを獲得した『監獄美術館の学芸員』も、高く評価されている読み切り。意志を持った絵画と学芸員の交流を描いた物語で、やはりユニークな世界観を作る力と、丁寧に関係性を描写する力が両立している。
名作読み切りを生み出してきた作者が、初の連載作品『ハヴィラ戦記』でどれだけの境地を見せ付けてくれるのか、期待するしかない。