『呪術廻戦』夏油一派はなぜ夏油傑を愛したのか……最終決戦にまで影響を及ぼす最強の“人たらし”
信者ではなく「家族」だった夏油一派
夏油は呪術高専の頃から、命を賭けて戦う呪術師にとって「何のために戦うのか」という意味付けが重要であることに気づいていた。そこで非術師の醜さや、呪術師の命が軽く失われていく現実に気づいたことで、「非術師のために戦う」という意味付けを拒絶するに至る。そして非術師を根絶し、「術師だけの世界」を作ることを目指すようになるのだった。
この決断は決して軽いものではなく、夏油は闇堕ちのきっかけとなった事件の直後、非術師である両親の命を自らの手で奪っている。自分の家族を特別扱いするわけにはいかなかったと語っていたが、これはあらゆる非術師を拒絶し、呪術師の味方として生きていくという覚悟を証明する行為だったのだろう。
代わりに夏油は信念を共にする仲間たちを新たな「家族」として、彼らが幸せに生きられる世界を作ろうとした。一切の迷いなく大義のために命を賭けて戦う姿は、特別な輝きを放っており、いわゆる救世主や教祖のそれに近い。
一般的には大義を信じて行動することは、その副産物として“狂信”を生むため、ある種の危険性をはらんでいる。しかし夏油が真に魅力的なのは、教祖として振る舞う意図がなかったと思われるところだ。
たとえば夏油は呪術高専から離脱した後、非術師が関わらない範囲で衣食住を済ませるようになったのだが、そのポリシーを仲間に押し付けようとはしなかったという。また「百鬼夜行」の際には、できるだけ仲間たちに命の危険が及ばないように配慮していた。あくまですべての計画は自分の信念によるもので、仲間たちはその道連れという意識があったのではないだろうか。
そうしたスタンスは、解散後の夏油一派の行動からも読み取れる。彼らは菅田真奈美と祢木利久を除いて、大義を受け継ごうとはせず、ただ夏油を弔うことを目的としていたからだ。最新話でも、ラルゥがミゲルを誘ったのは復讐ではなく弔い合戦だった。
そう考えると、夏油一派が心酔していたのは世界を変える救世主ではなく、むしろ「家族」を導いてくれる愛すべきリーダーだったのかもしれない。
いずれにしろ、彼のカリスマ性は作中に大きな痕跡を残しており、最終決戦にまで影響を及ぼしている。乙骨憂太が女たらしだとすれば、夏油は作中屈指の“人たらし”と言えるだろう。
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