2023年、出版社の売上げランキング分析 上位不動の中、大きく売上を伸ばした3社はどこ?

■売上げランキング注目すべきは?

  1月11日、書店大手の丸善ジュンク堂書店は、2023年の出版社ごとに売上げベスト300を発表した。講談社が3年連続で1位となり、売上金額は約30億6750万円。出版業界の専門メディア、新文化オンラインが報じた。調査の対象期間は2023年1月1日から12月31日で、対象店舗は全国の128店。

 講談社に続く2位がKADOKAWAで、売上金額は約30億30万円を達成。3位は集英社で売上金額は約21億803万円、4位の小学館は売上金額が約16億8079万円、5位のGakkenは売上金額が約10億7199万円となっている。なお、6位から20位までは以下のような順位である。

6位:新潮社
7位:文藝春秋
8位:ダイヤモンド社
9位:日経BPマーケティング
10位:朝日新聞出版
11位:岩波書店
12位:旺文社
13位:TAC出版
14位:中央公論新社
15位:宝島社
16位:幻冬舎
17位:河出書房新社
18位:技術評論社
19位:インプレス
20位:SBクリエイティブ

 上位を見ると、日本を代表する雑誌を抱え、さらに漫画や小説のベストセラーを連発している出版社が安定した強さを誇っていることがわかる。講談社もKADOKAWAもメディアミックスの巧さには定評があり、新刊書店へ足を運ぶきっかけに繋がっているようだ。7位までは昨年と同じ順位であり、1~2位の細かな上下はあれども、それほど大きな変化は見られない。

  むしろ、注目すべきは100位以内に入った中で躍進が目立つ出版社だ。いくつか例を挙げるとすれば、前年67位から51位となったサンマーク出版、94位から57位となった実業之日本社、114位から87位となったスターツ出版などの例がある。また、36位から28位に順位を押し上げたJTBパブリッシングにも注目したい。

 51位のサンマーク出版は、戦略的な広告出稿やタイアップの巧みさ、さらに話題の著者を発掘する編集者のスキルの高さで10万部超のベストセラーを連発しているうえ、『コーヒーが冷めないうちに』を筆頭に、世界的なロングセラーもある。実業之日本社は小説から雑誌まで幅広く話題書を連発し、累計150万部を突破したそにしけんじの『ねこねこの日本史』シリーズや、知念実希人の『天久鷹央』シリーズなど、充実のラインナップを誇る。

 『るるぶ』などの旅行ガイドに強みをもつJTBパブリッシングは、2020年から始まったコロナ騒動の影響をもっとも受けた出版社といえる。しかし、2023年は自粛ムードが収まって得意の旅行ガイドの売れ行きも堅調に回復したと考えられる。また、コロナ騒動の中でもアニメやゲームとタイアップした『るるぶ』などの話題作をしっかりと生み出しており、『るるぶ原神』はベストセラーとなるなど、同社の強みを生かした本作りが盛んである。

  出版業界は先行きが見えない業界といわれるが、それでも編集者や営業担当者の創意工夫により、ベストセラーが誕生しているのがわかる。今年はどのような書籍が人気になるのだろうか。来年のランキングの変動にも注目していきたい。

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