カレンダー、スピリチュアル、絶景、ペットにアイドル……現状の売れ筋と今後の覇権を握るのは? 

カレンダー、現状の売れ筋と今後の覇権

   2023年がまもなく終わる。この時期に書店を覗くと、店頭にずらっと並んでいるのが来年用の手帳とカレンダーである。実は、書店で重視されているのが、こうした手帳やカレンダーなどの季節商品である。莫大な売り上げではないものの、年末、そして新学期の始まりの時期になると、毎年確実に一定数が売れるため、重要な商材であることは間違いない。

  今年は書店の年末のカレンダー商戦に、激震が走った。旧ジャニーズ事務所(現:SMILE-UP.)に所属するタレントの、2024年用の公式カレンダーが発売されないことが決まったのだ。一連の騒動を受けて自粛する形になったわけだが、第一に慌てたのはファンである。Xには「残念」「悲しい」「来年のカレンダーは何を楽しみにすればいいのか」などのコメントがポストされていた。

 「もしかしたら発売がない可能性も想定していたけれど、本当にそうなるとは。毎年のように店で注文してくれるファンが何人もいるから、今回の決定は痛い。ジャニーズ関連の商品は、書店にとっても大きな柱。若い人たちが書店を訪れなくなれば、他の商品の売上にも影響するのではないか」と語るのは、埼玉にある大手書店チェーンの担当者である。

  そして、出版社にとっても、カレンダーはかなり“おいしい”商品であった。出版不況が表面化してから、カレンダーに中堅出版社が多く参入した。それは、書店と同様に毎年一定数の売上が見込める上に、制作コストが安いためである。一般的なカレンダーのフォーマットを使用し、テーマを決めて、写真やイラストをあしらえばいいのだから、書籍の編集と比べたら手間が省けて、お手軽なのだ。

  様々な出版社がそれぞれの個性を活かしたカレンダーを出していて、城、仏像、動物、植物など豊富な種類がある。取材で撮影した写真家の作品や、寺院などと付き合いのある出版社からすれば、借用した写真を流用すればいい。それでいて、熱心なファンは写真が大判で見られるのだから、ありがたいものだ。カレンダーは出版社も、書店も、消費者も全員が嬉しい商品と言っていい。

  今やスマートフォンにもカレンダーは標準装備されているが、カレンダーは“大判で見ることができる写真集”としての需要や、魅力もあった。旧ジャニーズ事務所の騒動はまだ収束する気配はなく、今後も様々な業界に波及するとみられる。その一方で、堅調な開運を謳うスピリチュアルものや絶景にK-POP、アイドルや動物関連のカレンダーが売上を伸ばすのか。年末年始から新学期にかけてのカレンダー商戦の行方が気になるところだ。

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